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Tunaboni Collectionsの制作情報をお知らせいたします

# ツナボニコレクションズ(Tunaboni Collections)公式ブログ

# 発売延期のお知らせとお詫び:CD「心をきみに奪われている」が発売延期となります

作品サイト  https://tunaboni.jp/kokoro/

       記

平素はご愛顧を賜り厚く御礼を申し上げます。

2020年6月24日(水)に発売を予定しておりました CD「心をきみに奪われている」は諸般の事情が重なったため、やむを得ず発売日を以下のように変更させて頂くこととなりました。
発売をお待ちいただいているお客様にはご迷惑をおかけいたしますことを深くお詫び申し上げます。


【変更前】2020 年 6 月 24 日(水)

【変更後】2020 年 9 月 25 日(金)

長らくお待ちいただくことになり誠に申し訳ありません。
お客様にご納得いただける製品を提供できるよう努めて参りますので、何卒ご理解くださいますよう重ねてお願い申し上げます。


合同会社ツナボニーティ駿河組
(Tunaboni Collections)

# ヴァン-私が愛したスパイ-ショート・ストーリー②

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トゥルーエンドのアフターストーリーです。
上坂元軍曹目線のお話になります。ネタバレを含みますのでご視聴後にどうぞ。
トラック6のちょっと前のエピソードも入っています。

「あの晩」


ヴァンの家を辞してバス停へと向かった。
庭で犬と戯れていたあの子が私の足取りを興味深そうに見つめていたので、声をかけるべきか迷った。
何歳くらいだろう。2歳に手が届くかどうかといったところか。
こうして間近に見ると目元以外の部分もあいつと似ていることがよくわかる。
懐かしさがこみあげてきた。

だが、なんと声をかければいいものか。
結局子どもなのに会釈をしてしまいキョトンとされる。朴念仁の自分が恨めしい。
しばらくじーっと私を眺めていたが、そのうち(変なおじさん)には興味を失ったらしく、再び犬に向かって小枝を投げ始めた。
転がるような笑い声を聞きながら歩きだす。

あの子には健やかに育って欲しい。
私が出来ることなら何でもすると言ったが、あの女性が自ら助けを求めるとも思えない。
こちらから声をかけていくべきだと思った。おかしなものだ。また心残りが増えてしまうとは。

バス停脇の山吹の黄色い花に小さなアリたちが群がっていた。
本当にのどかでいい場所だ。
バスの来る時間まで散策をしたいような気持ちになったが、無理をすればこの足が悲鳴を上げるだろう。
次の家に行くのが遅れては本末転倒になる。
諦めてベンチに座っていると、繰り返してきたひとつの思いがまた浮かんできた。
あいつを死に至らしめたのは私なのかもしれない、という思いがー


「あんたが俺の新しい飼い主すか」
諜報活動の指揮を取ることになり、最初に対面した時あいつが言った言葉は今でもよく覚えている。
「俺の条件は2つだけです。それさえ守ってくれればどんなことでもやります」
・仕事に取り掛かる前に報酬は前金でくれ。成功時には必ず上乗せしろ。
・軍資金(関係者への買収など潜入時に使うらしい)はケチらず渡せ

清々しいまでに金に執着するので思わず声を上げて笑ってしまった。
「?なんで笑うんすか?」
「いや、そんなに金が大事なのかと思って」
するとしごく真面目な顔になった。
「あたりまえでしょ」
すっと空気が冷えた。こいつは単なる間諜じゃない、何か信念を持っていると気づいた瞬間だった。

ヴァンは優秀だった。非情なまでに任務を遂行した。民間人を巻き込んでも平気だった。
「あれはやりすぎだ」とたしなめても「結果が全てっすよ」と言い放った。
「上坂さんは甘い。軍人に向いてねぇな」
と、私自身の本質を突かれて憤ったこともある。
だが、あいつを嫌いになることはなかった。

あの晩。
作戦会議と言いつつ中身はたわいない会話に終始した。
勿論、軍への造反の計画はあいつには話さなかった。
酔って軽口混じりで理想とは違う今の現実をこぼしていたに過ぎない。
だがあいつは悟ったのだ。
あの部隊で起きている問題の元凶が何なのか。
その存在がなくなれば物事が上手く回るだろうということを。

……ヴァン、教えてくれ。
私は何か匂わすようなことを言ったか?
なぁ、ヴァン。
おまえは何故察してしまったんだ?
何故、関係のないおまえがそれを実行しようと思ったんだ?

あの晩。
「ヴァン、いいか?日本人は本来礼節を重んじる民族である。駄目だ。今の日本人はみーんな駄目だ!」
酔ってそう繰り返す私を
「へぇ、自分が何国人かなんて考えたこともねぇな。あんた、どうでもいいことにこだわるんすね」
と、あいつはカラカラと笑い飛ばした。
その乾いた笑い方がシャクに触った。
「……そういうおまえは実は日本人だろう?本名は何ていう?」
「……絶対笑うから言わねぇ」
「笑うわけがない。親がつけてくれた大事な名前だろうに。一体誰が笑うんだ」
そう聞くと、少しためらったあとで小さな声で「ばんみつてる」と言った。
「へぇ。漢字は?」
「ひかるにかがやく。……笑っていいすよ。中身と真逆だしだいいち全然似合わねぇし」
「いい名前じゃないか。大事にしろよ、みつてるくん」
「……ちっ、言うんじゃなかった。さっさと忘れろ。ほら、その酒もう一杯くださいよ!」
「あははは」

あの晩、おまえは何を思っていたんだろう―


バスが土埃を上げながらやってきた。
のんびりとした足取りで農家の人たちが次々と降りてくる。
乗り込んだ席から窓の外を見ると、あの子を抱きかかえたあの女性が私を見て手を振っていた。
やさしげな笑顔とヴァンに似た笑顔が並んでこちらを見ている。
頭を下げて私も軽く手を振った。

走り出したバスの振動に身を委ねながら考えた。
次にここに来る時には、玩具や文房具をいろいろ用意しておこう。
朴念仁の自分が選ぶものだから気に入ってもらえるかどうか不安だが、空の上のあいつは「あんたらしいな」と笑い飛ばしてくれる気がする。
なぁヴァン、そうだろう?

(了)

自粛生活しんどいですね。早くこの事態が収束することを願っております。
こちらはお暇つぶしにでもお読みいただければ幸いです。
(かしわ)

# ホワイトデースペシャルSS「KIRA・KIRA_Vol.3流星編」

KIRA・KIRAシリーズ公式サイトはこちら
流星ブログSS

「Whiteday in Rose」

『倍返しとは、贈り物などを受領した際にそのお礼として、その倍額に相当する金品を贈答することである。
上記本来の意味から転じて『お礼参り』などと同様に、復讐の意味合いとして用いられることが多い』(コトバンクより)

うわぁ……なんて物騒な解説。
彼のことだから自分が言った『倍返しする』という言葉は絶対覚えてると思う。
バレンタインデーは彼のリクエストに従い………えーと、あのー……口移し……でチョコを食べさせるという羞恥プレイをさせられたことはまだ記憶に新しい。
(食べ物で遊んじゃいけません!)

そういうわけで朝からハラハラしていたわけだが、昼頃に「5時くらいから始めようか?」とラインが来た。
ふーむ。ホワイトデーとは始めるものなのか。
「何か必要なものがあるなら買っていくよ」と返すと
「俺への愛だけでいいよ」ときた。
……コレ、どんな顔して打ってるのよ(知ってる、涼しい顔だよ)

そういうわけで約束の時間に手ぶらで彼の部屋に赴いた。
「来たよ」
「いらっしゃい」
部屋を見渡してみたが特に怪しい仕掛けは見当たらず……普通にご飯を食べさせてくれるだけ、かな?
それだっていつもとても嬉しいけど。

「お腹空いてる?」
「?ううん、まだ5時だもの。そんなに空いてないよ」
「じゃ、早速風呂に入ってもらおうか」
「えっ」
「今日は、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーだから」
「え、あの、意味がわかんない」
「まぁまぁ、いいからおいで」

バスルームに引っ張られていくと馥郁とした芳香が漂っていた。
その芳香は銀色に輝く1立方メートルほどの謎の物体から出ているものらしく。
「……あの……これは何……?」
「家庭用スチームサウナボックスだね。折りたためるヤツ」
「買ったの!?」
「うん、買った。俺は今までも『健康』にはかなり関心があった」
「……まぁ製薬会社にいたもんね」
「あなたと出逢ってからそこに『美容』が追加されたわけ。実は今日初めて使うんだ。……服を脱いでこのタオルを巻いて中に入ってみてよ」
「……ちょっ、私で実験したいだけなんじゃ……」
「失敬だな。いいから入りなよ」
理系男子~~~~!

結論から言うと案外悪くないものだった。仕込まれていたローズオイルの量もちょうどよくて、ふんわりとリラックスしてくる。
「汗かいてきたね。これ飲んでみて」
とグラスを手にして流星がやってきた。
「これは何ですか」
「スム―ジー。美味しくできてるよ」
作ったの?という言葉は飲み込んだ。流星だもの、自分で作るに決まってる。

「で、使い心地はどう?」
「……ごめん。悪くないんだけど……ひとりだと退屈……」
そう言うと、ハッとした顔になる。
「しまった。俺としたことが……歌でも歌ってやろうか?」
「……聞きたい気もするけど、絵づら的にシュールだから遠慮するよ」
「テレビかタブレットが必要だったな。今後はそうしよう」
そうして銀色ボックスからようやく(?)私は解放された。

シャワーを使い、部屋着(だぶだぶ)を借りてリビングに向かうと、予想どおりの光景が目の前に広がっていた。
「お料理でテーブルが見えない……」
「サウナで最大限にすきっ腹になってもらおうと思ったんだ。足りなかったら追加する」
「大丈夫、倍返しありがとう」
「食べ終わったら足つぼをやろうか?」
「いやいやいや、大丈夫だから。ホントにありがとう」

スパークリングワインを開けて乾杯。
毎回何かとからかわれているのは否めないのだが、着地点はいつもここになる。
仕事の話や世間話をしながらふたりで美味しいご飯を食べる。
この時間がとにかく幸せだ。

しばらくして酔いが回ってきたらしい流星がつぶやいた。
「……結局まだ同棲してくれないね。何が問題なの?」
……同棲の話はかなり以前に提案されていたのだけれど、実行には至っていない(★)
同棲をしたら否が応でも「その先の未来」を意識することになる。その覚悟を決める暇もない、という感じかな。
仕事が忙しすぎる。
でも仕事はすごく楽しい。面白い。
「あなたはそういう人だよね……だから惹かれたんだ」

流星は隣に座りなおして、私の頭を肩にもたせかけた。
「……俺はあなたをサポートしていく。あなたの背中が小さく丸まってる時は伸ばしてあげる」
うん。
「美味しいものを食べさせて元気な細胞を増やしてあげる」
うん。
「忘れないで。俺が側にいることを」
「忘れたこと無いよ?」
そーかな~と渋い顔をする。
「……『仕事とアタシ、どっちが大切なのっ、ムキーっ』てなっちゃう残念な女性の気持ちがわかってきた」
「絶対うそ」
「うん、嘘。どっちも大事なんでしょ。あなたはそれでいい……」

小さいキスが唇に落とされた。おや、と流星が驚いている。
「バラの香りがする」
「おかげさまで。全身匂うよ」
「シーツにもその香りを移してくれるんでしょ?」
「……まぁ……そうなるのかな」
「うわぁ……倍返しの倍返しをされるのか……」
「何それ(笑)」
「じゃあ、早速美味しくいただきます」

そうして、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーはバラの香りで締めくくられた。


(了)


★公式通販特典SS「美味しい生活」より

※バレンタインデーでは断トツモテ男の流星でした。皆さまからの贈り物はスタッフやかしわさんと堪能いたしました。
また他キャラにもありがとうございました。そちらは機会を見計らって何かしらアップさせていただこうと思っております。
お心遣い誠にありがとうございました。

# 「ヴァン-私が愛したスパイ」ショート・ストーリー

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「おふとん」
(トラック1と2の間のお話)


連れてきちまったのはいいが、いざ家を目の前にすると自分でも躊躇した。
(……ガキなんか連れてきていいところじゃねぇよな)
思ったとおり、こいつも目を丸くしている。
「……ここがヴァンのおうち?」
「ああ、そうだ」

もともとは小間物屋の物置で、そこのせがれとつるんで悪さをしていた時にふたりでヤサとして使っていた。
当の小間物屋は商売を広げるとかで別の土地に親子で移り住んでいった。
ありゃあ多分、せがれを更生させようってことだろう。
そのまま俺を住まわせてくれたのは、母屋と店に不審者を近づけるな、というつもりらしい。
「番犬」扱いだが、俺が不審者の筆頭だってことは当のせがれがよく知っている。
案の定、金目のものは何一つ残していかなかった。

「ヴァン、いいシノギがあったら呼んでやるぜ」とニヤリと笑ったあいつの顔を思い出す。
そういえば、かれこれ一年くらい経つが何の音沙汰もない。
真面目に働いているか、俺のことを忘れたか、しくじって死んじまったか。そのどれかだろう。

小さな白い顔が俺を見上げている。
そうだった。こいつを一晩泊めるんだっけ。
「店の横にある公衆便所に行け。戻ったらそこの井戸から水を汲んでよく手を洗え。チフスが怖ぇからな」
そう言うと首を横に振る。便所に行きたくないらしい。
……こいつ、漏らしたりしねぇかな。
不安になったので抱きかかえて便所に無理やり押し込んだ。

「ヴァン、いるー?」
「いるぞ」
「……出た―」
「……そりゃよかったな」
……こんな酔狂、誰にも見られたくねぇぞ、おい!
待つ間、電信柱を見上げていたら、てっぺんに欠けた月がちょこんと載っていた。
辺りは夜の静寂。空気はしんと凍っている。

家に戻り引き戸を開けると、当然のことながら中は薄暗く、9歳のガキは足音も立てずにこわごわと入っていく。
その様子が用心深い猫みたいでなんだか笑えた。
明り取りのランプを点けると興味深そうに中をきょろきょろと見回していたが、その目の下にうっすらとクマができていた。
なるほど、お子様はおねむの時間だ。

「眠いんだろ?もう寝ろ」
「お風呂に入りたい」
【お】風呂か。さすが領事館だ。
「……ここにはねぇ。母屋の据え風呂をたまに借りるが、今から水汲みをしたくねぇし薪も勿体ねぇ。今日は風呂はナシだ」
すると、心底がっかりした顔になる。ちびでも女だな。
しょうがないので、流しの前につれていき柄杓を使って顔を洗わせた。
「じゃあ、もう寝るんだぞ」
「……私のおふとんは?」
【お】ふとん。また【お】がついてやがる。
「おまえさまの【お】布団などはございませんね。……俺の布団ならそこにあるのがそうだ」
「……使っていいの?」
「……しょうがねえだろ。使えよ」

うん、とうなずくや否や、ササッと素早く布団の中に潜り込む。
そうか。寒かったんだ。それで風呂に入りたかったのか。
そういえば、こいつはずっと寝間着のままだった。
……我慢強いのかな。
父親が亡くなったと聞いて驚いていたが、悲しんではいなかったし。

「……いや。ピンと来てねぇのかも」
「なあに?」
「なんでもねぇ。寝ちまえ」
父親がこの世から消えていることをよくわかっていないんだろう。
それどころか【死】そのものをわかっているのかどうか。
目の前で命の火が消えていく瞬間を、この歳のガキが幾度も経験したとは思えねぇ。
あのすぅぅっと背筋が冷えていくような感覚……いいや。
親の無残な死に様なんか知らねぇ方がいいに決まってら。
おまえ、見なくて良かったぞ。
悲しみも寂しさもずっと後でやってくる。おまえがもう少し物がわかるようになったらな。

しかし。
なんで俺はこいつを連れてきちまったんだろう。
火事見物していた大勢の中にまぎれこませて、置いてけぼりにすることもできたのに。
「……お巡りに会っちまったからだな。きっとそうだ」
「ヴァン?」
「なんでもねーよ。寝ろ」

巡査に会わず、あの場で置いてけぼりに成功したとして。
あんだけ人の数がいたんだ、親切なおばちゃんが「迷子だね」と、こいつを交番に届けるだろう。
すると、いろいろ調べたあげく、領事館に住んでいるガキだということがわかり……
領事館に忍び込んでいた俺の風体をこいつが巡査に喋り……うおっ、冗談じゃねぇぞ!?
放火をしたのは俺ってことにされちまうだろうが!!

「よし、さすが俺だ!連れてきて正解だった!」
「ヴァン、うるさい……」
「はぁ?」

いけ図々しいガキだ。我慢強いんじゃねぇ、図太いんだ。
「おらおら、どけ、俺の場所を空けろ」
ことさら乱暴に隣に潜り込むと、むーんと唇を尖らせるので、遠慮なくつまんでやる。
「ちっせぇ口。人形かよ」
からかわれたことに気をよくしたのか、にこにこと笑いかけてくる。

「一緒だとあったかいね」
「こんな布団でか?おまえは明日からふっかふかの【お】布団で眠れるんだぞ。いっそ羨ましいね」
「じゃあ、ヴァンも一緒に住もう」
「……住めねぇよ。俺みたいな男には縁がない場所だ」
「なんで?」
「……花街ってのはそういうところなの。もう寝ろ」

背を向けると、諦めたような小さなため息が聞こえた。
やがてそれは寝息に変わってしっとりと部屋の空気を潤していく。
ふと、自分の身体が背中越しに温もってきたことに気づいた。

【犬と子どもの体温は高い】
それを教えてくれたのは誰だっけ……?
古い記憶をたぐりよせたが思い出せそうもない。
それに一体どういうわけか、こいつの寝息はやけに耳に心地いい。
……あーあ。おかしな晩になったもんだぜ。


(了)


今朝方、予想DL数を上回ったと伺いまして、取り急ぎボツにしたプロットをSSにしてみましたが、いかがでしたでしょうか。
感謝の気持ちをこめて。
かしわ

# mariageシリーズ&KIRA・KIRAシリーズ「バレンタイン・スペシャルSS」

mariageシリーズサイトはこちら
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KIRA・KIRAシリーズサイトはこちら
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「バレンタインデー前のとある休日のお話」

1.その日、某デパートのバレンタイン特設会場では一軒の店の前に人々が行列を成していた。

宇佐美晃「ああ、全然試食が足りない。奥さーん、ほうじ茶チョコ、刻んでおいてください」
晃の妻「あと二箱しかないですよ、どうします?」
宇佐美晃「うっそー……じゃあ、ほうじ茶は完売の札を出しときましょう」
晃の妻「晃さんよかったですね。新作が大人気ですね!」
宇佐美晃「……うっ……今はそれどころじゃないのでちょっとだけ封印してくださいね」
晃の妻「?何をですか」
宇佐美晃「あなたのそのふにゃら~っとした笑顔です。一瞬盛りそうになったんですよ。心臓に悪い。ささ、お仕事お仕事」
晃の妻「……そっちこそ心臓に悪いですよ!」


2.その会場を歩く諏訪心月と真行寺司。

諏訪心月「へぇ、大盛況だなぁ。司、どこのチョコレートならうちの嫁さんが喜ぶと思う?」
真行寺司「……みーくん相変わらずだね。自分がチョコレートを贈っちゃうんだね」
諏訪心月「もともとバレンタインはそういうものだ。司、男は待ちの姿勢じゃダメなんだ。こっちからガツーンと行かないと」
真行寺司「……あー……。奥さんに同情する。相当ガツンガツンされたんだろうな……」
諏訪心月「なんだと?もうコロッケ買ってやんないよ?……それよりおまえ、彼女とはどうなの」
真行寺司「彼女じゃなくて婚約者ね。おかげ様で順調ですが」
諏訪心月「そうなんだ。一緒に連れてくればよかったのに」
真行寺司「嫌だよ、休日に上司に会わせるの可哀想じゃん。そっちこそ奥さんはどうしたの」
諏訪心月「今、ちびたちを連れて実家に遊びに行ってる。ヒマだから司と遊んでやろうと思って」
真行寺司「えっ、本当は逃げられたんじゃないの?それで寂しくなって俺を呼び出したとか?」
諏訪心月「……おまえ、絶対に許さない」
真行寺司「こんなに大人げのない人がCEOって……ルッチキーオの未来が心配だよ……」


3.その頃の樋口家。

樋口涼「ひよこ。2/14は外に食べに行こう」
涼の妻「別にいいですけど……この日はいつも私の料理を食べてくれてるのにな……」
樋口涼「……ああ。バレンタインのおまえの独創的な料理は楽しみなんだ。でもトキメキすぎて心臓に悪いことがわかってきた」
涼の妻「だったら尚更がんばりますよ。今度は何に入れようかな?チョコレート」
樋口涼「……やっぱりわざとやってたんだな?」
涼の妻「ううん、最初のは大真面目でしたよ? でも今ははっちゃけぶりを期待されている気がするんです。違います?」
樋口涼「……なんてことだ。ひよこが俺に似てきてしまった……」
涼の妻「仲良し夫婦は似てくるらしいですね」
樋口涼「……ぴよぴよぴよぴよ。ホントだ!俺までとうとうひよこに!?」
涼の妻「wwwww」
樋口涼「……おい大丈夫か? ちょっと笑いすぎだぞ?」

※経験値の差で涼の勝ち


4.再びバレンタイン会場。

ティト「ワオ。チョコレート売り場がすごいね、あそこにも待機列ができてる。最後の人は最後尾カードを持たないのかなぁ?」
ティトの妻「……ティトさん、いつの間にオタク文化まで覚えたの?」
ティト「SNSで見たよ。アレは秩序が素晴らしいね」
ティトの妻「検索の方向性がよくわからないよ」
ティト「時代劇はやめて最近はアニメで日本語を学んでるから。でも『無理無理無理無理』……コレはどういう時に使えばいいのかわからない」
ティトの妻「ううん、どこにも使わなくていいと思う」
ティト「ここはアモーレにあふれている場所なんだねぇ……あの女の子、あんなに沢山買ってるよ? 恋人がひとりじゃないのかな?」
ティトの妻「今のバレンタインは友だち同士や自分で楽しむ人が多いのよ。彼氏がいるいないは関係ないの」
ティト「おおう……僕の日本文化の知識はアップデートが足りないようだ。じゃあ、愛しあうカップルはどこにもいないのかな?」
ティトの妻「私たちがそうでしょ?」
ティト「! 確かにそうだよ。僕たちがこの中で一番愛し合ってるよ!この幸せをみんなに分けてあげたいよ」
ティトの妻「……うーん……ティトさんてホントぶれない……」


5.再び宇佐美家の店前。

峯岸達己「あー、やっと順番が来た。すみません、ほうじ茶の生チョコをひとつと、」
宇佐美晃「申し訳ありません。ほうじ茶は完売してしまいまして……」
達己の妻「あらー……たっちゃん、またやっちゃったねぇ」
峯岸達己「本当だな。俺たちいつもこうだな、あはは、困っちゃうねぇ」
宇佐美晃「……本当に申し訳ありません。(この人たちまったりして和むなぁ)」
峯岸達己「じゃあ、この抹茶トリュフの試食、いいですか」
宇佐美晃「勿論どうぞ。お試しください」
峯岸達己「ほら、口開けてみ。あーん……どう?」
達己の妻「!!」
峯岸達己「美味しいんだ。じゃあコレもらおうか?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
峯岸達己「じゃあ、抹茶トリュフを2つ、和紅茶の生チョコを2つ……じゃなくて3つずつがいいんだよね?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
宇佐美晃「!? (彼女が言葉を発してないのに、完全に読み取っている!)」
宇佐美晃「(どういうことだ……表情だけでわかるのか……?)」
峯岸達己「ん? 何か?」
宇佐美晃「いえいえ、何でもないです。どうもありがとうございます(熟練の技を見せていただけて)」


6.その頃の佐々木陽と妻。
.
佐々木陽「もしもーし。連絡遅くなってゴメン。やっとホテルに到着したよ。凍えるかと思った」
陽の妻「陽ちゃんお疲れ。アラスカはどう?」
佐々木陽「こっちはものすごく寒い。部屋もまだあったまってないし……アレ、おまえ今どこにいるの?」
陽の妻「デパートでいろいろ見てた。フェア限定のチョコレートアイスが美味しそうだから買っておくね」
佐々木陽「……う……アイスというワードがたまらなく寒い………おまえがいるところはあったかいんだな……」
陽の妻「ありゃっ、ゴメン!」
佐々木陽「別にいいよ。……よし、帰ったらおまえと一緒に風呂でじっくりあったまる。決めたぞ」
陽の妻「うんうん、そうして」
佐々木陽「それで、ぬくぬくしながらベッドの中でチョコレートアイスを食おう」
陽の妻「おー、いいねぇ。アメリカ映画みたいだね」
佐々木陽「……それで、あんなことやこんなことをして、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「……ついでに、指やら舌やらで、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「………早くおまえに会いたい……」
陽の妻「……陽ちゃん、がんばって……!」


7.また宇佐美家の店前。

月村海「えーと……抹茶の生チョコ2つ、和紅茶の生チョコを3つ、あと、このお茶の葉タブレットを……んーーー5つ!」
宇佐美晃「はい。こちらはご贈答用ですか?」
海の妻「いえ、この人が全部食べます」
月村海「もーおんちゃん、そんなこと、知らない人にバラさなくていいのにぃ~」
海の妻「ふふ、ごめんごめん」
月村海「俺、すっごい甘党なんです。今日のフェア楽しみにしてたんですよ~、あっちの店でも、○▽■で、」
宇佐美晃「ああ、それはいいですねぇ……(うん、この人たちも和む……)」
海の妻「アレ。……カイ、ほっぺにココアの粉ついちゃってるよ。ちょっとこっち向いて」
宇佐美晃「!?」
月村海「ちょ、おんちゃん、恥ずかしいよ。自分でやるってば」
海の妻「だって自分じゃ見れないでしょ?」
月村海「大丈夫だってば。……あっ、すみません、おいくらですか?」
宇佐美晃「……(うんうん、これもまたひとつの愛の形……)」
月村海「あのぅ??」
宇佐美晃「はっ! すみません、お会計ですよね! 少々お待ちくださいね!」


8.同デパートの別の階にいる高城流星と彼女。
.
流星の彼女「流星、バレンタインの会場に行かない?」
高城流星「いや、さっきCEOを見かけたから、まだ行かない方がいいと思うよ」
流星の彼女「? 別に挨拶くらいしてもいいんじゃない?」
高城流星「ちがうって。捕まったら飲みに連れていかれそうだから避けてんの」
流星の彼女「まさか。いくら何でもこんな昼から飲まないでしょ?」
高城流星「はー……あなたは知らないんだねぇ……プライベートのCEOを……」
流星の彼女「流星、遠い目をしてる……」
高城流星「ってゆーか、俺へのチョコレートを買うつもり?」
流星の彼女「ううん、職場で配る用」
高城流星「俺用は?」
流星の彼女「勿論考えてるよ」
高城流星「ほーお……それはそれは。倍返しを楽しみにしてて」
流星の彼女「……お、お手柔らかにお願いします……!」


9.その頃の大須賀壮吾と壮吾の彼女。

大須賀壮吾「はい、女優さんから貰ったチョコ。ちょろすけにあげるよ」
壮吾の彼女「あらーずいぶん早めにもらったんですね。ズバリ本命じゃないってことですね!」
大須賀壮吾「……あからさまに嬉しそうな顔してるぞ」
壮吾の彼女「私からのは本命ですよ」
大須賀壮吾「おまえからのチョコが義理だったら絶望するわ」
壮吾の彼女「一緒に食べましょうね」
大須賀壮吾「?自分が食べたいチョコを買ったの?」
壮吾の彼女「……ちがいますよ。やはり広告に携わるものとしてはトレンドに乗るべきだと思いまして」
大須賀壮吾「……いやな予感しかしない……」
壮吾の彼女「大丈夫です!私を信じましょう!」
大須賀壮吾「…………」

※彼女がどんなチョコレートを買ったのか壮吾以外知る由もない


(おまけ)
会場で取材をしていた某テレビスタッフ。

インタビュア「……ね、去年インタビューしたあの人たちがいたわ。お客さんにもいたよ? どういうめぐり合わせなんだろうね?」
カメラマン「……やっぱおまえだな」
インタビュア「何?」
カメラマン「……おまえのいちゃいちゃへの欲求があの人らを呼び寄せてんの」
インタビュア「……それって私がいちゃいちゃしたがってるって意味?」
カメラマン「まぁそんなとこだろ」
インタビュア「あんただって去年一緒にいたじゃないよ」
カメラマン「おお、確かにそうだった。俺もいちゃいちゃを欲してるのかな?」
インタビュア「あははは、早く彼女作んなよ」
カメラマン「それ、おまえが言う??……ったく鈍感な女ってタチが悪いよなぁ……」
インタビュア「……ん?なんか言った?」
カメラマン「なんでもなーい。……ほら、帰るぞーー」

(了)

※今年の夏にmariageアソートディスク第3弾「陽夫婦編&ティト夫婦編」をリリース予定です!お楽しみに♪

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