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Tunaboni Collectionsの制作情報をお知らせいたします

# ツナボニコレクションズ(Tunaboni Collections)公式ブログ

# KIRA・KIRAアソート2発売記念ショートストーリー

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女性心理研究会(公式特典)の翌朝のお話。
流星目線です。

※公式特典をお聴きでない方にも特に問題なくお読みいただけると思います。

「晴天」

カーテンを開ける音がして、朝の光が差した。
だが、いつもとちがうのは差し込んできた方角と光量だ。
なんだ、このまばゆさは。光のシャワーを浴びているみたいだ。
しかもそばに誰かいる……ちっこいのが。
「パパー、りゅーせーさんおきたー」
……小さいCEOじゃん……へぇ……美形って小さい時から美形なんだ。
……あ?

瞬時に俺は状況を理解した。
(ここ、CEOの家だ……!)
「起きたの?おはよう」
「あ……おはようございます」
CEOがもうひとりの【小さいCEO】(たぶんこっちは女子)と手をつなぎながら近づいてきた。

「気分はどう?」
「大丈夫です……俺、泊まったんですね……なんて図々しいことを……」
「ううん、俺が飲ませすぎてしまったんだ。ひとりで帰らせるのは危険だと判断した。勝手してすまなかったね」
「とんでもないです……ご迷惑をおかけしてすみません」
傍らのちびCEOその1は、さっきから俺の顔をずっと凝視している。
美形の目線はこんな小さいサイズでも結構な圧があって落ち着かない。
どうしたもんか、と曖昧にへらへら笑いかけてやると、輝く笑顔になった。

「いっしょにあそぼ」
「………え……?」
「いっちょにあちょぼ」
ちびCEOその2も即座に呼応する。
「……あはは……」
大きいCEOはノンノン、というように指を振った。
「残念だけど、流星さんにはきみたちと遊べるパワーが今は無いよ。ふたりで子ども部屋で遊んでおいで」
ちびCEOズはおとなしく父親の言いつけに従い、去っていった。

「……あの、俺、帰りますね」
「朝食くらい食べていきなさい。空きっ腹が続くと二日酔いは回復しない。きみ、夕べほとんど食べてなかったよ」
「いやあ、でも」
CEOは「レトルトのおかゆがある。あれなら胃に優しいから」とキッチンにはけていった。
……これなんだよな、この人の有無を言わせぬ強引さ。
でも、好意に裏打ちされているのがわかるから拒めない。

待っている間、俺はぐるりと部屋を見渡した。
リビングは二十畳くらいの広さがありどこもかしこもピカピカだった。
窓からの眺望ははるか彼方まで青空が続いている。
……多分ここってタワマンだよな。
俺が寝ていたこのソファもお高いものに違いなく……やばい。よだれ垂らしたりして。

慌ててソファのチェックをしている俺に気がついたのか、CEOはテーブルに丼を置きながらながら言った。
「すまない。客間を用意しようとしたんだが、眠りこんだからそのままにした。寝心地が悪かっただろう」
「いいえ、全然そんなことは。……あの、そういえば奥様は……?」
「ああ、マンションの管理組合の会合とやらに出かけたようだ。家のことは任せきりでよくわからない(笑)」
はにかんでいる姿にこの人の家庭人としての一面が見て取れた。

おかゆは二日酔いの胃をじんわりと温めてくれた。
「おかゆ、美味かったです。CEOの家にもレトルトなんてあるんですね」
言ってから不躾だったか、と気づく。
いや、俺のこのズケズケ言う性質もこの人にはバレてるな。今さらだ。
「そりゃああるよ。子どもがいるからね。突然風邪をひいたり腹を壊したりするから備えが必要になる」
「……なるほど」

CEOは優雅に足を組み替える。
「独りでいた頃は勿論こんなものは無かった……でもね。いろんなものが増えるし変わるよ」
「?」
「誰かといっしょに暮らすとはそういうことだ……今まで自分の生活には無かったもの見慣れないものが増える。その存在をあたりまえに思えること。変化の過程を楽しめること。それをクリアできれば問題ないよ」
「……」
「夕べの同棲の話。覚えてない?」
「……覚えてますが。そんないいお話、おっしゃってましたっけ……?」
「プライベートの酒の席では真面目な話はしないんだ。……まぁ俺が言いたいのはそれだけだな」

俺の彼女は自分のスタイルをあまり変えられないタイプのように思える。
新しい環境をすんなり受け入れられない気持ちはわからなくない。
転職したての自分がそうだったから。
でも、いつまでもこのままではいられないこともわかっているはず。
まだ決定打がないだけなんだ。

「……俺たちは足して2で割るとちょうどいいんだと思います」
「大体どこのカップルもそんなもんじゃないの」
と穏やかに笑うCEO。大人の男だな。
俺はこの境地にいつになったらなれるんだろう。
「……押してダメなら引いてみる、でしたっけ」
「うん。なんでも試してみたらいいと思うよ。ダメなら諦めるのも選択のひとつだね」
「……冗談じゃない。俺は諦めが悪いんですよ」
そう言うと今度は大きな声で笑われた。

奥様に非礼を侘びてから帰るつもりだったが「まだ時間をかかるかも」と言われ退散することにした。
マンションのエントランスまで見送ってくれそうだったので、
「お子さんたちをほっとけないでしょう。玄関で失礼しますよ」と固持した。
シューズクローゼットの上には写真がいっぱい飾られていて家族の仲睦まじさがよくわかる。

「?」
その中に外国人らしき女性の写真があった。
むき出した肩に手をやり憂いを帯びたその表情は圧倒的に目を引いた。素人とは思えない。
「これ、お母さまの写真ですよね」
母親が昔モデルをやっていたというから多分それだろう。顔が似ている。

「……どれのこと………はぁっ!?」
「きれいな人ですね。ほんとはセミヌードなのかな、トリミングしてるみたいだけど」
「……いつに間にこんな真似を……気がつかなかった」
「……?」
「……あのポスターを加工したんだな……玄関にも置いたのか……あいつめ……」
「?」
「とりあえずきみは帰りなさい」
「えっ」
「それじゃまた!」

唐突に放り出されてあ然としたが、気を取り直してエレベーターに乗った。
あのCEOが慌てるなんて……一体何だったんだろう。
あいつめ、って奥さんのことだよな?
しばらく考えていたが答えは出そうもない。まぁ、夫婦の間にもいろいろあるってことなんだろう。
……そうか。それなら俺みたいな青二才があたふたしたって別に問題ないじゃないか。
素直にそう思えた。

ロビーを通り抜けエントランスから外に出る。
休日の都会の朝は人通りもまばらで平日の喧騒が嘘のようだ。
地上から見上げた青空はビルの形にジグザグに切り取られていて、タワマンの高層階から見たものとはまるで違う。
けれど、今の俺の目には十分爽快に映った。

(了)

依頼されていたSSですが、完成間近で駒城先生(三廼先生)の非公式イラストのCEOを拝見しまして急遽ラストを書き直しました。
強火の妄想、最高!と笑いながら気絶できて幸せな夜でした。
燃料をありがとうございました。

先生のツイッター(@328px)……他にも「かっこいい壮吾」「癒やしの流星とメガネ流星」「わんわん司」のイラストを上げてくださってます。

(かしわ)


# バレンタインデー特別企画「メガネ流星アクリルスタンド・プレゼントキャンペーン」(~2021.2.12まで)

イラストをご担当いただいている駒城(三廼)先生によるプレゼント企画です。

先生から「個人で楽しむ用にメガネをかけた流星のアクリルスタンドを作っていいですか?」と打診があり了承したところ一部を弊社にお譲りくださいました。
とても珍しいアイテムですのでファンの方向けに「プレゼントキャンペーン」を開催しようということになりました。
キャンペーンの応募方法は以下のとおりです。

2021バレンタイン眼鏡流星キャンぺーン

◆応募期間~2/12(金)23:59まで

◆応募方法
1.Tunaboni Collections公式Twitterアカウント(@tunaboni_info)をフォロー
2.アクスタプレゼントのツイート(上の画像付きのツイート) をRT  で完了

◆抽選日~2/20(土)頃
当選者にDMでご連絡します。DMを送信できなかった場合他の方を繰り上げますのでご注意ください。

※アクリルスタンドは「メガネ流星ほほえみバージョン」「メガネ流星つんつんバージョン」の2種類です。当選者の方にはどちらかをランダムで発送します。
皆さまのご参加をお待ちしております!

# KIRA・KIRAアソート1発売記念ショート・ストーリー

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社内コンプライアンス調査会(公式特典)のあと友だちになった司(CV湯町駆)と壮吾(CV久喜大)の会話です。
本編ご視聴後にお楽しみください。

※公式特典をお聞きでない方でも特に問題なくお読みいただけると思います。
※司がCEOとの関係についても触れています。

「司くんと壮吾くん」

とある日のルッチキーオ社内にて。

//壮吾、たまたま来社していた司に気づく

壮吾「真行寺さん、来てたんだ。先日はどうも」
司「ああ、大須賀さん、久しぶり。あの後、特にお咎めはなかったでしょ?」
壮吾「ありがとう、全部あんたのおかげだよな」
司「今後は気をつけてね(笑)」
壮吾「なぁ、時間があるなら昼飯でもどう?お礼におごるよ」
司「え、いいのかな」
壮吾「いいよいいよ、お礼もあるけどまぁ親睦を深めるつもりっていうか」
司「そうだねぇ……いいよ、行こうか」

//ふたり、近所の定食屋へ移動

壮吾「ここのメシ美味いんだよ。おばちゃん、今日のおすすめランチひとつね。真行寺さんは何にする?」
司「じゃあ、俺もそれにしよ。お願いしまーす」

壮吾「ふー……もう調査会は終わったんだろ?」
司「うん、終わった。まぁそれほど深刻な案件はなかったから……大丈夫でしょ」
壮吾「ね、聞いていい?」
司「ん?」
壮吾「あんたとCEOってどういう関係?」
司「ああ……まぁ知っている人は知ってるからいいか。従兄弟なんだよね」
壮吾「従兄弟なの?そういうことだったんだ」

//司、以下の図の内容を説明
ふたりの関係

壮吾「はー……なるほど。顔がちょっと似てるような気もしてたんだよな……」
司「似てないでしょ。あっちはクォーターで超美形だけど俺は純日本人だし」
壮吾「雰囲気が似てるのかな」
司「……中身は違うはずだけどなぁ」
壮吾「え、似てるって言われるのはイヤなんだ?」
司「俺はもうちょっと予定調和を考えるタイプだよ。あんなに強引じゃない」
壮吾「wwwww(爆笑する)」

//ふたりの定食がやってくる

壮吾「あ、おばちゃんありがと。……いただきまーす」
司「いただきます……あむ(もぐもぐ)うん美味い。いい店が近所にあっていいね」
壮吾「俺も常連ってほどじゃないよ。最近はあいつに任せる仕事が増えたから。内勤の時はほぼ毎食ここかな」
司「あいつって彼女さん?」
壮吾「そう。あいつ俺より出世するつもりだから。その気になってるとこが可愛いんだけどな」
司「(にこにこ笑う)」
壮吾「……何?」
司「……こないだもそうだったんだけど、彼女さんの話をしている時、すごくいい顔してんの」
壮吾「……そう?やばい、人前じゃ出さないようにしてるつもりだった」
司「いいねぇ。恋人時代……俺も初心を忘れずに頑張らなきゃ」
壮吾「……真行寺さんの奥さんってどんな人?」
司「そうだね。……俺を甘やかしてくれる人……ちがうな。甘やかそうとしている人、だな」
壮吾「へーー意外……」
司「そう?」
壮吾「だって真行寺さんしっかりしてるから」
司「そうなんだよ。アタックしている最中わざと甘えてたから。今だに甘やかそうとすんの。そこが可愛い」
壮吾「……はぁん……」
司「……何?」
壮吾「……うん……なんとなくCEOに似てると思う」
司「おいおい」

//ふたり、食事を食べ終え外に出る

壮吾「おばちゃん、ごちそうさま」
司「ごちそうさまでした。ホントにおごってもらってよかったの?」
壮吾「全然。安かっただろ、気にしないでくれ。それに、まだ聞きたいこともあるし」
司「ん?」
壮吾「……真行寺さんたちって結婚前に同棲してた?」
司「ああ……そっちね。うん、してた。しといた方がいいと思う」
壮吾「あ、やっぱそう?俺のツレたちも大体そう言うんだよな……」
司「やり方とか習慣のすり合わせをしといた方がいいよ。デートだけじゃわかんなかったこととか見えてくるから。それに、」
壮吾「あ、ちょっと待って。録音するから最初からもう一回言ってくれ(とスマホ出す)」
司「ちょ、またかよwww(爆笑する)」

//ふたり、歩きながら社内に戻っていく

(了)



# ホワイトデースペシャルSS「KIRA・KIRA_Vol.3流星編」

KIRA・KIRAシリーズ公式サイトはこちら
流星ブログSS

「Whiteday in Rose」

『倍返しとは、贈り物などを受領した際にそのお礼として、その倍額に相当する金品を贈答することである。
上記本来の意味から転じて『お礼参り』などと同様に、復讐の意味合いとして用いられることが多い』(コトバンクより)

うわぁ……なんて物騒な解説。
彼のことだから自分が言った『倍返しする』という言葉は絶対覚えてると思う。
バレンタインデーは彼のリクエストに従い………えーと、あのー……口移し……でチョコを食べさせるという羞恥プレイをさせられたことはまだ記憶に新しい。

そういうわけで朝からハラハラしていたわけだが、昼頃に「5時くらいから始めようか?」とラインが来た。
ふーむ。ホワイトデーとは始めるものなのか。
「何か必要なものがあるなら買っていくよ」と返すと
「俺への愛だけでいいよ」ときた。
……コレ、どんな顔して打ってるのよ(知ってる、涼しい顔だよ)

そういうわけで約束の時間に手ぶらで彼の部屋に赴いた。
「来たよ」
「いらっしゃい」
部屋を見渡してみたが特に怪しい仕掛けは見当たらず……普通にご飯を食べさせてくれるだけ、かな?
それだってとても嬉しいけど。

「お腹空いてる?」
「?ううん、まだ5時だもの。そんなに空いてないよ」
「じゃ、早速風呂に入ってもらおうか」
「えっ」
「今日は、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーだから」
「え、あの、意味がわかんない」
「まぁまぁ、いいからおいで」

バスルームに引っ張られていくと馥郁とした芳香が漂っていた。
その芳香は銀色に輝く1立方メートルほどの謎の物体から出ているものらしく。
「……あの……これは何……?」
「家庭用スチームサウナボックスだね。折りたためるヤツ」
「買ったの!?」
「うん、買った。俺は今までも『健康』にはかなり関心があった」
「……まぁ製薬会社にいたもんね」
「あなたと出逢ってからそこに『美容』が追加されたわけ。実は今日初めて使うんだ。……服を脱いでこのタオルを巻いて中に入ってみてよ」
「……ちょっ、私で実験したいだけなんじゃ……」
「失敬だな。いいから入りなよ」
理系男子~~~~!

結論から言うと案外悪くないものだった。仕込まれていたローズオイルの量もちょうどよくて、ふんわりとリラックスしてくる。
「汗かいてきたね。これ飲んでみて」
とグラスを手にして流星がやってきた。
「これは何ですか」
「スム―ジー。美味しくできてるよ」
作ったの?という言葉は飲み込んだ。流星だもの、自分で作るに決まってる。

「で、使い心地はどう?」
「……ごめん。悪くないんだけど……ひとりだと退屈……」
そう言うと、ハッとした顔になる。
「しまった。俺としたことが……歌でも歌ってやろうか?」
「……聞きたい気もするけど、絵づら的にシュールだから遠慮するよ」
「テレビかタブレットが必要だったな。今後はそうしよう」
そうして銀色ボックスからようやく(?)私は解放された。

シャワーを使い、部屋着(だぶだぶ)を借りてリビングに向かうと、予想どおりの光景が目の前に広がっていた。
「お料理でテーブルが見えない……」
「サウナで最大限にすきっ腹になってもらおうと思ったんだ。足りなかったら追加する」
「大丈夫、倍返しありがとう」
「食べ終わったら足つぼをやろうか?」
「いやいやいや、大丈夫だから。ホントにありがとう」

スパークリングワインを開けて乾杯。
毎回何かとからかわれているのは否めないのだが、着地点はいつもここになる。
仕事の話や世間話をしながらふたりで美味しいご飯を食べる。
この時間がとにかく幸せだ。

しばらくして酔いが回ってきたらしい流星がつぶやいた。
「……結局まだ同棲してくれないね。何が問題なの?」
……同棲の話はかなり以前に提案されていたのだけれど、実行には至っていない(★)
日常的に尽くされたら自分が駄目人間になりそうな気がするし、同棲をしたら否が応でも「その先の未来」を意識することになる。その覚悟を決める暇もない、という感じかな。
仕事が忙しすぎる。
でも仕事はすごく楽しい。面白い。
「あなたはそういう人だよね……だから惹かれたんだ」

流星は隣に座りなおして、私の頭を肩にもたせかけた。
「……俺はあなたをサポートしていく。あなたの背中が小さく丸まってる時は伸ばしてあげる」
うん。
「美味しいものを食べさせて元気な細胞を増やしてあげる」
うん。
「忘れないで。俺が側にいることを」
「忘れたこと無いよ?」
そーかな~と渋い顔をする。
「……『仕事とアタシ、どっちが大切なのっ、ムキーっ』てなっちゃう残念な女性の気持ちがわかってきた」
「絶対うそ」
「うん、嘘。どっちも大事なんでしょ。あなたはそれでいい……」

小さなキスが唇に落とされた。おや、と流星が驚いている。
「バラの香りがする」
「おかげさまで。全身匂うよ」
「シーツにもその香りを移してくれるんでしょ?」
「……まぁ……そうなるのかな」
「うわぁ……倍返しの倍返しをされるのか……」
「何それ(笑)」
「じゃあ、早速美味しくいただきます」

そうして、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーはバラの香りで締めくくられた。


(了)


★公式通販特典SS「美味しい生活」より

# KIRA・KIRAシリーズ心月編「クリスマス・ショートストーリー」

KIRA・KIRAシリーズサイト

クリスマス・イヴにちなんでSSをお届けします。
本編からしばらく経った頃のお話です。

0807ツイッター告知CEO

KIRA・KIRA_Vol.4心月編(CV:鷹取玲)

「Bon voyage(ボン・ボヤージュ)」

数週間前、心月さんからクリスマス・イヴの予定を聞かれて、おやと思った。
どうやら彼の方に予定があるらしい。
「社長にやられた……わざとこの日に重役忘年会を入れられたよ。他の連中は今更家族や恋人とイヴを祝うなんて年齢じゃないからね」
さすがにこれ以上の不興は買いたくないということだろう、すまなそうな顔をする。
そうか……恋人と過ごすクリスマス・イヴは無しか。まぁしょうがない。
「いい機会ですよ。社長と和解する方向に持っていってくださいね」
片手を上げて、承知した、と神妙に誓う彼。心月さん頑張って。

「で、その埋め合わせといってはなんだけど。来週の金曜に有休を取ってくれないかな。泊りがけで出かけたい」
「?一泊?」
「そうだね」
「どこに行くんでしょう」
それはナイショ、と片目をつぶる彼。
それまで何故か外泊デートはしたことが無かった(ん?視察旅行はカウントしないよね?)
いたずらっぽい顔で笑う彼を見て何か仕掛けがあるのはわかる。
楽しみなような怖いような……やっぱり楽しみだな。

そして当日。
迎えに来た彼は車のトランクを開けて私の荷物を積み込んだ。中を覗くとやけに彼のスーツケースが大きい。
一泊だと聞いたから私のバッグはコンパクトだ。まさか……海外?いや、パスポートを持ってきてとは言われてないし?
「かさばる服が入ってるからね。じゃあ乗って」
助手席で首をひねる私を見てまた愉快そうに笑う。
かさばる服……あれかな。サンタクロースのコスチューム。時期的にその考えが浮かんだ。

想像してみる。深夜、サンタコスをして私の枕元にプレゼントを置いている心月さん。
ちょっと笑っちゃうな。寝たふりするのは難しそうだし……っていうか普通にキビシイぞ?
「ぷっ(笑)……何考えてるの。笑ったり困ったり忙しいね」
「質問していいですか?」
「どうぞ」
「そのかさばる服って赤い色?」
「?違うよ。赤い方がよかったのかな。黒だよ」
どうやらサンタではないらしい。そうこうするうちに都内を抜けて神奈川に入っていく。

車は山下公園の目の前にあるクラシックホテルのそばの駐車場に停まった。
「すごい……素敵ですねぇ……ここに泊まるんでしょうか?」
「残念だけどちがうな。さてと、荷物を出そう」
ちがうんだ。確かに彼はフロントではなく中のカフェに向かっていく。
「いい時間だからお昼にしよう。このカフェはプリンアラモード発祥の地なんだって」
そうか。ここに泊まるものだと思い込んで図々しいこと言っちゃった。反省。

流石に老舗のホテルだけあってスタッフの接客が素晴らしい。
グラタンもプリンもしっかりした味でとても美味しかった。
「まだ早いからその辺を散策しようか。中華街に行ってもいいし。散策中、荷物はフロントに預かってもらおうかな」
今から車で移動するつもりはないということか。
ますます謎が深まる。じゃあどこに泊まるんだろう。
探偵わたし、詰んだ。もうあとは心月さんとのデートを楽しむだけにしよう。

中華街や山下公園をひとしきりぶらつく。
楽しい反面、ビジュアルが良すぎる彼には周囲の注目が集まるので、そばにいる私はとても面映い。
「……やたらと私たち見られてますね……」
「そう?きみが可愛いからかな」
「ナイ。それはナイ」
「あるよ。他の男に見られないようにしよう」と私を隠すように胸元に抱いた。
恥ずか死ねるとはこのことだ。罪な人だなぁ。
「お。そろそろ大さん橋に行かなきゃ。荷物を受けだしたらタクシーで行くよ」
「大さん橋?遠いんですか?」
「まぁ歩ける距離だけど、荷物が邪魔だとイチャイチャできない。それは避けたいね」
「……タクシーでイチャイチャ、ですか?」
「うん。するかもね」

タクシーは大さん橋に到着した。運転手がげんなりしてるように見えたのは気の所為じゃないと思う。
さん橋の右岸には豪華客船「飛鳥(あすか)Ⅱ」が停泊していた。年に数回しか停泊しないそうで船マニアの人たちが盛んにシャッターを切っている。
「すごい……こんなに大きいんですね。これが豪華客船なんだ……」
「ね、かっこいいね。俺も飛鳥には初めて乗る」
「え?」
「もう乗船の受付が始まってるみたいだから並ぼうか」
え?え?
「あの、ちょっと待って、船に乗るなんて聞いてませんけど!?」
「言ってないもん」
「だって、一泊旅行って……あ!もしかして飛鳥に泊まるんですか!?」
「そうだよ」
「うっそー!」

頭を混乱させたまま船のクルーたちに誘導されて乗船する。
到着デッキには素晴らしいクリスマスツリーが飾られていたし、生のバンド演奏も奏でられていたのだが、それを堪能する気持ちの余裕もなく。

「……気に入らなかった?飛鳥ワンナイトクルーズ、悪くないと思うけど。……見てごらん、さん橋が遠ざかっていくよ」
バルコニーとの間のカーテンを開けてご満悦な彼。
「……気に入らないわけじゃなくて……どうして言ってくれなかったんですか」
「だって、予約が取れるかどうかギリギリまで確定できなかったし」
「取れた時に言ってくれれば……ちゃんとした服を持ってきてないです。ディナーはカジュアルNGなんでしょう?」
「……ああ、きみの服か。フォーマルなドレスを買いに行くつもりだけど?」
「………買う!?」
「豪華客船にはドレスショップがあるものだから。買い物がてらぐるっと探検してみようか」
出会いから彼にはドキドキさせられっぱなしであることを思い出す。
感覚が違いすぎます……神様、平民の私にどうしてこんな彼ができてしまったのでしょうか。

それで探検?をしたのだが、船内の施設はとても充実していて、またも驚かされた。
「カジノがある!」
「あるよ。換金はできないけど」
「シガーバー……」
「喫煙ルームだね。この手の船だとたぶん葉巻を売ってるはずだ。試してみる?」
「……いえ、いいです」

何よりも旅客の服装が気になっていたのだが、今の自分との差異はさほど無いことがわかった。
「そういうものだよ。乗船中ずっとフォーマルじゃ疲れるだろ。長旅だとスポーツウェアで過ごす人も多い。……あ、これなんかどう?」
彼が選んだドレスは私の好みの品だったが、果たして?
恐る恐る値札を見ようとしたが「無粋なことはしないの」と制止されてしまう。
「自分の彼女がキラキラしてる姿が見たいだけなんだよ。……だから付き合ってくれるだけでありがたい」
困ったようなはにかんだような表情で彼の本心を悟った。そうか……そうだった。

私のためとは言わない人。自分のエゴだと言う人。
でも、その純度の高い信念は人を高めて輝かせる物だと思う。ルッチキーオのユーザーも彼の信念で増えていった。
私も彼に出会う前の自分に戻ろうとは思わない。多分、今の私の方が以前よりキラキラしてると思うから。

買い物を終えて船室に戻ると私は言うべきことを告げた。
「ごめんなさい、私、嬉しいんです。クルーズもドレスも」
「うん」
「サプライズをプランしてくれたのに、素直に喜ぶだけでよかったのに、『どうして』とか『嘘』とか驚くばかりで……すごく失礼でした」
「そんなことはない」
心月さんはひそやかに否定する。
「……きみのその感覚がいつも俺の暴走を諌めてくれている。不快になんか思わない。それにこうやって俺に寄り添おうとしてくれる」
「……そう言ってもらえると……」
年が離れているのにこんなにも尊重してくれる。こんな人、他にいるわけがないよ。
「……今、言うべきだな。……ディナーのあとで言おうと思ってたけど今が一番心が近い」
そして、膝を床について私を見上げた。

「……きみは俺にとって唯一無二の人なんだ。だから……結婚してくれないか」
緊張したまなざしだった。今まで見たことがないほどに真剣な。
だから私もきちんと答えようとしたのだけど……なぜか出たのはこんな言葉で。
「……ハイかイエスのニ択で答えますね……どっちにしましょうか?」
「え」
心月さん、私、すっごくあなたに影響を受けてるみたいですよ。

その後、ドレスに着替えた私を見て、ほぅ……と彼がため息をついた。
「よく似合う。最高だ」
そんなことを言う彼こそブラックフォーマルがばっちり決まっていて(どこのハリウッド俳優ですか)と思う。
そして、スーツのポケットからエンゲージリングを取り出して私の左薬指にはめていく。
「これで、婚約者殿はますますキラキラしたね」と頬にキスをする彼。
私を必要として愛してくれる人が、こんなに喜んでくれるのが嬉しい。
そこにディナーの開始時刻を告げる船内アナウンスが流れた。

「時間になったね。婚約者殿、ディナーを堪能しに行こう」
「はい、楽しみです」

腕を組んで歩く廊下の窓越しにライティングされたベイブリッジが映っている。
その下を飛鳥Ⅱは悠然とくぐり沖へと進む。
きっとこの船は幾万人もの人生の折々を見届けてきたんだろうな。
私たちもそのうちの二人なのだと思うと胸が熱くなった。
足を止めた私にやさしいまなざしで心月さんが「ほら、進もう」と促す。
やがて街の夜景は燦然と輝きながらゆっくりと後方に移動していった。

(了)

※SSにしては長かったですね、すみません。楽しんでいただければと思います(かしわ拝)

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