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Tunaboni Collectionsの制作情報をお知らせいたします

# ツナボニコレクションズ(Tunaboni Collections)公式ブログ

# ホワイトデースペシャルSS「KIRA・KIRA_Vol.3流星編」

KIRA・KIRAシリーズ公式サイトはこちら
流星ブログSS

「Whiteday in Rose」

『倍返しとは、贈り物などを受領した際にそのお礼として、その倍額に相当する金品を贈答することである。
上記本来の意味から転じて『お礼参り』などと同様に、復讐の意味合いとして用いられることが多い』(コトバンクより)

うわぁ……なんて物騒な解説。
彼のことだから自分が言った『倍返しする』という言葉は絶対覚えてると思う。
バレンタインデーは彼のリクエストに従い………えーと、あのー……口移し……でチョコを食べさせるという羞恥プレイをさせられたことはまだ記憶に新しい。
(食べ物で遊んじゃいけません!)

そういうわけで朝からハラハラしていたわけだが、昼頃に「5時くらいから始めようか?」とラインが来た。
ふーむ。ホワイトデーとは始めるものなのか。
「何か必要なものがあるなら買っていくよ」と返すと
「俺への愛だけでいいよ」ときた。
……コレ、どんな顔して打ってるのよ(知ってる、涼しい顔だよ)

そういうわけで約束の時間に手ぶらで彼の部屋に赴いた。
「来たよ」
「いらっしゃい」
部屋を見渡してみたが特に怪しい仕掛けは見当たらず……普通にご飯を食べさせてくれるだけ、かな?
それだっていつもとても嬉しいけど。

「お腹空いてる?」
「?ううん、まだ5時だもの。そんなに空いてないよ」
「じゃ、早速風呂に入ってもらおうか」
「えっ」
「今日は、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーだから」
「え、あの、意味がわかんない」
「まぁまぁ、いいからおいで」

バスルームに引っ張られていくと馥郁とした芳香が漂っていた。
その芳香は銀色に輝く1立方メートルほどの謎の物体から出ているものらしく。
「……あの……これは何……?」
「家庭用スチームサウナボックスだね。折りたためるヤツ」
「買ったの!?」
「うん、買った。俺は今までも『健康』にはかなり関心があった」
「……まぁ製薬会社にいたもんね」
「あなたと出逢ってからそこに『美容』が追加されたわけ。実は今日初めて使うんだ。……服を脱いでこのタオルを巻いて中に入ってみてよ」
「……ちょっ、私で実験したいだけなんじゃ……」
「失敬だな。いいから入りなよ」
理系男子~~~~!

結論から言うと案外悪くないものだった。仕込まれていたローズオイルの量もちょうどよくて、ふんわりとリラックスしてくる。
「汗かいてきたね。これ飲んでみて」
とグラスを手にして流星がやってきた。
「これは何ですか」
「スム―ジー。美味しくできてるよ」
作ったの?という言葉は飲み込んだ。流星だもの、自分で作るに決まってる。

「で、使い心地はどう?」
「……ごめん。悪くないんだけど……ひとりだと退屈……」
そう言うと、ハッとした顔になる。
「しまった。俺としたことが……歌でも歌ってやろうか?」
「……聞きたい気もするけど、絵づら的にシュールだから遠慮するよ」
「テレビかタブレットが必要だったな。今後はそうしよう」
そうして銀色ボックスからようやく(?)私は解放された。

シャワーを使い、部屋着(だぶだぶ)を借りてリビングに向かうと、予想どおりの光景が目の前に広がっていた。
「お料理でテーブルが見えない……」
「サウナで最大限にすきっ腹になってもらおうと思ったんだ。足りなかったら追加する」
「大丈夫、倍返しありがとう」
「食べ終わったら足つぼをやろうか?」
「いやいやいや、大丈夫だから。ホントにありがとう」

スパークリングワインを開けて乾杯。
毎回何かとからかわれているのは否めないのだが、着地点はいつもここになる。
仕事の話や世間話をしながらふたりで美味しいご飯を食べる。
この時間がとにかく幸せだ。

しばらくして酔いが回ってきたらしい流星がつぶやいた。
「……結局まだ同棲してくれないね。何が問題なの?」
……同棲の話はかなり以前に提案されていたのだけれど、実行には至っていない(★)
同棲をしたら否が応でも「その先の未来」を意識することになる。その覚悟を決める暇もない、という感じかな。
仕事が忙しすぎる。
でも仕事はすごく楽しい。面白い。
「あなたはそういう人だよね……だから惹かれたんだ」

流星は隣に座りなおして、私の頭を肩にもたせかけた。
「……俺はあなたをサポートしていく。あなたの背中が小さく丸まってる時は伸ばしてあげる」
うん。
「美味しいものを食べさせて元気な細胞を増やしてあげる」
うん。
「忘れないで。俺が側にいることを」
「忘れたこと無いよ?」
そーかな~と渋い顔をする。
「……『仕事とアタシ、どっちが大切なのっ、ムキーっ』てなっちゃう残念な女性の気持ちがわかってきた」
「絶対うそ」
「うん、嘘。どっちも大事なんでしょ。あなたはそれでいい……」

小さいキスが唇に落とされた。おや、と流星が驚いている。
「バラの香りがする」
「おかげさまで。全身匂うよ」
「シーツにもその香りを移してくれるんでしょ?」
「……まぁ……そうなるのかな」
「うわぁ……倍返しの倍返しをされるのか……」
「何それ(笑)」
「じゃあ、早速美味しくいただきます」

そうして、タカシロ・プレゼンツ・スペシャル・ホワイトデーはバラの香りで締めくくられた。


(了)


★公式通販特典SS「美味しい生活」より

※バレンタインデーでは断トツモテ男の流星でした。皆さまからの贈り物はスタッフやかしわさんと堪能いたしました。
また他キャラにもありがとうございました。そちらは機会を見計らって何かしらアップさせていただこうと思っております。
お心遣い誠にありがとうございました。

# KIRA・KIRAシリーズ心月編「クリスマス・ショートストーリー」

KIRA・KIRAシリーズサイト

クリスマス・イヴにちなんでSSをお届けします。
本編からしばらく経った頃のお話です。

0807ツイッター告知CEO

KIRA・KIRA_Vol.4心月編(CV:鷹取玲)

「Bon voyage(ボン・ボヤージュ)」

数週間前、心月さんからクリスマス・イヴの予定を聞かれて、おやと思った。
どうやら彼の方に予定があるらしい。
「社長にやられた……わざとこの日に重役忘年会を入れられたよ。他の連中は今更家族や恋人とイヴを祝うなんて年齢じゃないからね」
さすがにこれ以上の不興は買いたくないということだろう、すまなそうな顔をする。
そうか……恋人と過ごすクリスマス・イヴは無しか。まぁしょうがない。
「いい機会ですよ。社長と和解する方向に持っていってくださいね」
片手を上げて、承知した、と神妙に誓う彼。心月さん頑張って。

「で、その埋め合わせといってはなんだけど。来週の金曜に有休を取ってくれないかな。泊りがけで出かけたい」
「?一泊?」
「そうだね」
「どこに行くんでしょう」
それはナイショ、と片目をつぶる彼。
それまで何故か外泊デートはしたことが無かった(ん?視察旅行はカウントしないよね?)
いたずらっぽい顔で笑う彼を見て何か仕掛けがあるのはわかる。
楽しみなような怖いような……やっぱり楽しみだな。

そして当日。
迎えに来た彼は車のトランクを開けて私の荷物を積み込んだ。中を覗くとやけに彼のスーツケースが大きい。
一泊だと聞いたから私のバッグはコンパクトだ。まさか……海外?いや、パスポートを持ってきてとは言われてないし?
「かさばる服が入ってるからね。じゃあ乗って」
助手席で首をひねる私を見てまた愉快そうに笑う。
かさばる服……あれかな。サンタクロースのコスチューム。時期的にその考えが浮かんだ。

想像してみる。深夜、サンタコスをして私の枕元にプレゼントを置いている心月さん。
ちょっと笑っちゃうな。寝たふりするのは難しそうだし……っていうか普通にキビシイぞ?
「ぷっ(笑)……何考えてるの。笑ったり困ったり忙しいね」
「質問していいですか?」
「どうぞ」
「そのかさばる服って赤い色?」
「?違うよ。赤い方がよかったのかな。黒だよ」
どうやらサンタではないらしい。そうこうするうちに都内を抜けて神奈川に入っていく。

車は山下公園の目の前にあるクラシックホテルのそばの駐車場に停まった。
「すごい……素敵ですねぇ……ここに泊まるんでしょうか?」
「残念だけどちがうな。さてと、荷物を出そう」
ちがうんだ。確かに彼はフロントではなく中のカフェに向かっていく。
「いい時間だからお昼にしよう。このカフェはプリンアラモード発祥の地なんだって」
そうか。ここに泊まるものだと思い込んで図々しいこと言っちゃった。反省。

流石に老舗のホテルだけあってスタッフの接客が素晴らしい。
グラタンもプリンもしっかりした味でとても美味しかった。
「まだ早いからその辺を散策しようか。中華街に行ってもいいし。散策中、荷物はフロントに預かってもらおうかな」
今から車で移動するつもりはないということか。
ますます謎が深まる。じゃあどこに泊まるんだろう。
探偵わたし、詰んだ。もうあとは心月さんとのデートを楽しむだけにしよう。

中華街や山下公園をひとしきりぶらつく。
楽しい反面、ビジュアルが良すぎる彼には周囲の注目が集まるので、そばにいる私はとても面映い。
「……やたらと私たち見られてますね……」
「そう?きみが可愛いからかな」
「ナイ。それはナイ」
「あるよ。他の男に見られないようにしよう」と私を隠すように胸元に抱いた。
恥ずか死ねるとはこのことだ。罪な人だなぁ。
「お。そろそろ大さん橋に行かなきゃ。荷物を受けだしたらタクシーで行くよ」
「大さん橋?遠いんですか?」
「まぁ歩ける距離だけど、荷物が邪魔だとイチャイチャできない。それは避けたいね」
「……タクシーでイチャイチャ、ですか?」
「うん。するかもね」

タクシーは大さん橋に到着した。運転手がげんなりしてるように見えたのは気の所為じゃないと思う。
さん橋の右岸には豪華客船「飛鳥(あすか)Ⅱ」が停泊していた。年に数回しか停泊しないそうで船マニアの人たちが盛んにシャッターを切っている。
「すごい……こんなに大きいんですね。これが豪華客船なんだ……」
「ね、かっこいいね。俺も飛鳥には初めて乗る」
「え?」
「もう乗船の受付が始まってるみたいだから並ぼうか」
え?え?
「あの、ちょっと待って、船に乗るなんて聞いてませんけど!?」
「言ってないもん」
「だって、一泊旅行って……あ!もしかして飛鳥に泊まるんですか!?」
「そうだよ」
「うっそー!」

頭を混乱させたまま船のクルーたちに誘導されて乗船する。
到着デッキには素晴らしいクリスマスツリーが飾られていたし、生のバンド演奏も奏でられていたのだが、それを堪能する気持ちの余裕もなく。

「……気に入らなかった?飛鳥ワンナイトクルーズ、悪くないと思うけど。……見てごらん、さん橋が遠ざかっていくよ」
バルコニーとの間のカーテンを開けてご満悦な彼。
「……気に入らないわけじゃなくて……どうして言ってくれなかったんですか」
「だって、予約が取れるかどうかギリギリまで確定できなかったし」
「取れた時に言ってくれれば……ちゃんとした服を持ってきてないです。ディナーはカジュアルNGなんでしょう?」
「……ああ、きみの服か。フォーマルなドレスを買いに行くつもりだけど?」
「………買う!?」
「豪華客船にはドレスショップがあるものだから。買い物がてらぐるっと探検してみようか」
出会いから彼にはドキドキさせられっぱなしであることを思い出す。
感覚が違いすぎます……神様、平民の私にどうしてこんな彼ができてしまったのでしょうか。

それで探検?をしたのだが、船内の施設はとても充実していて、またも驚かされた。
「カジノがある!」
「あるよ。換金はできないけど」
「シガーバー……」
「喫煙ルームだね。この手の船だとたぶん葉巻を売ってるはずだ。試してみる?」
「……いえ、いいです」

何よりも旅客の服装が気になっていたのだが、今の自分との差異はさほど無いことがわかった。
「そういうものだよ。乗船中ずっとフォーマルじゃ疲れるだろ。長旅だとスポーツウェアで過ごす人も多い。……あ、これなんかどう?」
彼が選んだドレスは私の好みの品だったが、果たして?
恐る恐る値札を見ようとしたが「無粋なことはしないの」と制止されてしまう。
「自分の彼女がキラキラしてる姿が見たいだけなんだよ。……だから付き合ってくれるだけでありがたい」
困ったようなはにかんだような表情で彼の本心を悟った。そうか……そうだった。

私のためとは言わない人。自分のエゴだと言う人。
でも、その純度の高い信念は人を高めて輝かせる物だと思う。ルッチキーオのユーザーも彼の信念で増えていった。
私も彼に出会う前の自分に戻ろうとは思わない。多分、今の私の方が以前よりキラキラしてると思うから。

買い物を終えて船室に戻ると私は言うべきことを告げた。
「ごめんなさい、私、嬉しいんです。クルーズもドレスも」
「うん」
「サプライズをプランしてくれたのに、素直に喜ぶだけでよかったのに、『どうして』とか『嘘』とか驚くばかりで……すごく失礼でした」
「そんなことはない」
心月さんはひそやかに否定する。
「……きみのその感覚がいつも俺の暴走を諌めてくれている。不快になんか思わない。それにこうやって俺に寄り添おうとしてくれる」
「……そう言ってもらえると……」
年が離れているのにこんなにも尊重してくれる。こんな人、他にいるわけがないよ。
「……今、言うべきだな。……ディナーのあとで言おうと思ってたけど今が一番心が近い」
そして、膝を床について私を見上げた。

「……きみは俺にとって唯一無二の人なんだ。だから……結婚してくれないか」
緊張したまなざしだった。今まで見たことがないほどに真剣な。
だから私もきちんと答えようとしたのだけど……なぜか出たのはこんな言葉で。
「……ハイかイエスのニ択で答えますね……どっちにしましょうか?」
「え」
心月さん、私、すっごくあなたに影響を受けてるみたいですよ。

その後、ドレスに着替えた私を見て、ほぅ……と彼がため息をついた。
「よく似合う。最高だ」
そんなことを言う彼こそブラックフォーマルがばっちり決まっていて(どこのハリウッド俳優ですか)と思う。
そして、スーツのポケットからエンゲージリングを取り出して私の左薬指にはめていく。
「これで、婚約者殿はますますキラキラしたね」と頬にキスをする彼。
私を必要として愛してくれる人が、こんなに喜んでくれるのが嬉しい。
そこにディナーの開始時刻を告げる船内アナウンスが流れた。

「時間になったね。婚約者殿、ディナーを堪能しに行こう」
「はい、楽しみです」

腕を組んで歩く廊下の窓越しにライティングされたベイブリッジが映っている。
その下を飛鳥Ⅱは悠然とくぐり沖へと進む。
きっとこの船は幾万人もの人生の折々を見届けてきたんだろうな。
私たちもそのうちの二人なのだと思うと胸が熱くなった。
足を止めた私にやさしいまなざしで心月さんが「ほら、進もう」と促す。
やがて街の夜景は燦然と輝きながらゆっくりと後方に移動していった。

(了)

※SSにしては長かったですね、すみません。楽しんでいただければと思います(かしわ拝)

# 【Vol.4心月編・本日発売!】KIRA・KIRAシリーズ:ハロウィーン・ショートストーリー第3弾流星編

KIRA・KIRAシリーズ第4弾心月編(CV:鷹取玲)が発売となりました。
ティザーサイトはこちらから

三夜連続ハロウィーン・ショートストーリーの最後は、第3弾流星編(CV:テトラポット登)をお届けします。

流星ブログSS

KIRA・KIRA_Vol.3流星編(CV:テトラポット登)
「ハロウィーンの策士」

10月は「自称・私のしもべ」である流星がハロウィーン仕様のお料理を振る舞ってくれている。
以前の言葉、「俺の食事であなたの細胞を作る」の実践がまだ続いているのだ。
そんなに頑張らなくていいよ、と申し出たこともあるが一笑に付された。
しもべが主人のために尽力するのは当たり前でしょ、と。
「イヤだったら我慢して食べる必要はないからね。美味しいと思うものだけ食べて」
そうじゃなくて美味しいから我慢できないのに。白状すると最近体重計に乗るのが怖い。

「太ってきた、と思う……」
「そうかな。どれ」
自然な手付きで私の背中を触る流星。その手がじょじょに下がってお尻にいくので、こらこら、そこでストップ、と制止する。
「ん~~……そうでもなくない?服の上からでも触り心地いいのがわかるし」っ……それはもうアウトなのでは?
と、オーブンから調理終了のチャイムが鳴った。
「お、焼けたみたいだな」
流星は弾む足取りでキッチンに移動していく。

その姿を見送りながら考えた。
どうしたら尽くさせずに済むのかな?
もしかして「アレしてコレして、違う、コレじゃない」って威張っちゃう方が流星的には好み?
仕事中はそれに近い指示も出すけど(一応こちらが先輩なので)プライベートでそれをできるかというと……元々そういう性質というわけでもなく。
……うーん難しいな。
「何を悩んでんの。……あちっ……皿に気をつけて、熱々だから」
「うわっ」

耐熱皿の上では丸々一個のかぼちゃを器にしたグラタンがとろけるチーズで蓋をされてグツグツ音を立てている。
「……すごい……ボリューミィ……」
「器ごと食べられるよ。外側を見てみ。一応、目と口を飾り切りにしてみた。ジャック・オ・ランタンに見える?」
「見える見える。器用だね……流石」
そう言うと満足げに笑った。それがなんとも言えずに良い笑顔なのでつい頭をぐりぐりしたくなる。
(そうか!これだ)
おもむろに流星の頭をぐりぐりする。
「流星って本当に何でも上手だよね。すごいなぁ」
「……相変わらずすげー刺さる……たまんねぇな」とじわじわしている流星。
うん、威張るのは無理だけど褒めるのはできるぞ。褒め上手を目指そう。

なんだかんだ言いつつ、ボリューミィで沢山細胞を増やしてくれそうな夕飯を食べ終わる。
「すごく美味しかった。ごちそうさま」
「残すかもしれないと思ってたけど食えちゃったな。俺はもっとイケたかも」
お料理の好きな人は食いしん坊だと言うが、流星もたくさん食べるタイプだ。これも私の2倍は食べていたのだが。
「流星って太らないよね」
「そういえばそうだな。……なあに?まだ太るかどうか気にしてるの?しなくていいのに」
「……気にするよ。たくさん食べても太らないお料理があればいいのに」
そう言うと、お?という顔になる。
「それって俺へのリクエスト?」
「?できるの?」
ふふん、と不敵に笑って「そりゃできるでしょ」と言ってのける。何だ、そう言えばよかったんだ。
「できるなら次からはそれでお願いしてもいい?」
「もっと取引先に言うみたいに言って」
……それ何かのセリフだった気がする。なんだっけ。
「えーと。……『次回からは太らないお料理の製作を貴殿に依頼したく存じ上げます』……?」
「あ、イメージと違った。やっぱ命令して」
「もー!」

あはは、と笑いながら私を抱きしめる流星。
「この身体を、俺が太らせたり痩せさせたりできるの?最高かよ」
「言ってることが怖いよ」
実のところ流星は策士なのだ。実際、私は主人じゃなくて籠の鳥なんだろうな。
しもべのふりをして私を絡めとってしまった男。
こうと決めたら一直線にその目的に向かって走れる男。
「だって、あなた、俺に愛されちゃってるんだもの。しょうがなくない?」
ん?といたずらっぽい目で私の顔を覗き込む。
「しもべを退任して『あなたの管理責任者』になろうかな」
「もうなってる」
「ちょっと違うな。大事にするのは一緒だけど、あなたの意志が反映されなくなるよ?」
「……ますます怖い」
「怖くないよ」
そう言って私の頬にやさしく口づける。

私の髪を撫でる手付きも耳に落とすキスもやさしいのに少し不安だ。
崇拝される器とも思えないのにそういう目で見られたこと。
そして「あなたはそのままでいいの」と言い切られたこと。そんなにいい女扱いされていいの?と思ってしまうのだ。
「私、ホントにこのままでいいのかな」
うん、と首筋にもキスをされる。
「どんなあなたでもいい。このままでもいいし、変わってもいいし」
「……うーん……」
「……なぁ、考え事やめない?いちゃつく時間が無くなるよ」
「流星のこと考えてるのに」
「何それ。殺し文句か」
「……振られたくないんだよね……」
「……ダブルで殺しに来た。コレが計算ならすごい策士……」
計算じゃな、と言いかけた言葉は彼の口の中に吸い込まれる。
そして、それは深い深いキスに変わっていった。

流星と初めて迎えたハロウィーンがもうすぐ終わる。
次もまたその次のハロウィーンも、ずっと流星と一緒に迎えられますように。ハッピーハロウィーン。


(了)

※全作かぼちゃをキーアイテムにしてみました。お楽しみいただけましたら幸いです(かしわ拝)

# 【Vol.4心月編明日発売!】KIRA・KIRAシリーズ:ハロウィーン・ショートストーリー第2弾壮吾編

明日10/30はKIRA・KIRAシリーズ第4弾心月編(CV:鷹取玲)の発売です。
ティザーサイトはこちらから

三夜連続のハロウィーン・ショートストーリー2つ目は、第2弾壮吾編(CV:久喜大)のお話です。

壮吾SS

KIRA・KIRA_Vol.2壮吾編(CV:久喜大)
「残業ハロウィーン」

今、壮吾先輩は絶賛残業中だ。
F3層(50代以上のユーザー)向けのラインのCMにずっと起用していた女優さんから、契約の休止を求められてしまった。健康上の理由とのことで仕方ないとはいえ、おおよそ組んでいた来期のCMスケジュールが白紙になった。
それで一からプランの組み直しをしているというわけ。

何か手伝えることはないかとうろうろしているのを見咎められる。
「ちょろすけ、俺を待たずに帰っていいよ」
「いえ、私もいつかピンチが来るかもしれないので後学のために」と言うと
「全然ピンチじゃないし。……まぁたまにはこんなこともあるよ」とにやりと笑う。
「ありますか」
「あるね。でもタレントを差し換える場合、イメージに合う人を選抜するのに時間がかかるしコンセプトも変えることがある。CMプランナーに丸投げもできるけど、それだと俺の流儀に反するな」
かっこいい。尊敬する。自分の仕事にプライドがある人の言葉だと思う。

「なぁ、俺、今尊敬された?」
うなずくと、またまたニカッと笑い「よし、褒めてくれたお返しに撫でてやろう」とクシャクシャ頭をかき混ぜられた。
「ていうか、これサビ残になるぞ。……俺のそばにいたいならそう言えばいいだろ」
上目遣いに見つめてくるのがずるい。
現在職場には私たち以外の誰もおりませんが、先輩?残業トークに甘さを混ぜてくるのはいかがなものでしょう。
まだ見つめ合っていたかったけど、どっぷり浸るわけにはいかないのであえて身体を離した。
「……えーと、夕飯買ってきますよ。何がいいですか?」
「おお助かる。何でもいいや。任せる」
ラジャ―! 美味しそうな夕飯を見繕ってまいります。

買い物かごを持ってコンビニ店内をうろつく。
お母さん食堂、美味しいよね……これに白いご飯とサラダは悪くないと思う。
何がいいかな。何でも食べる人だけど、と最後のひとつだったハンバーグに手が伸びた。
人気があるみたいだね、これにしよう。
ふとレジ横を見ると、ハロウィーンパッケージのスナック菓子が山積みされていて、すべて半額の値札が貼られている。
そうか。ハロウィーンももう終わるんだ。
せめて雰囲気だけでも味わってもらおう、と言うことでかぼちゃのプリンを買ってみた。

休憩室に立ち寄って、ご飯とおかずをレンチンする。デミグラのいい匂い。うん、間違いがない。
このドアの向こうに腹ペコの先輩がご飯を待っていると思うと何故か「お母さん的な気分」になってきた。
「おお、ありがとう。美味そう」
破顔する壮吾さんがやけに可愛い。
箸を使ってご飯をかきこんでいる横顔を見ながら(壮吾、美味しいかい?)と心の中で呼びかけてみる。
「……?おまえの分は?」
「いえ、私は帰ってから食べます」
「アレ、帰してもらえると思ってたの?」
「!」
「なぁ、ちょろ知ってるか?残業エッチって会社員の6割が体験してるらしいぞ」
「!?」

驚き固まる私の頬に大きな手が伸びる。ああ、胸元から『大和』の香りがする。私たちの。
(駄目です、駄目、そんなこと、しちゃ駄目、絶対に……………)(……?)
薄く目を開けると身体を折り曲げて笑う壮吾さんの姿があった。
「あっはっはっはっ、おまえ、ホントにちょろいな。まさか目を閉じるとは思わなかった」
「~~~~!」
………ひどい。からかわれた。
「……帰ろうかな」
「怒った?」
「怒ってないです。休憩室の冷蔵庫にデザートがあるので食べてください」
「悪かったよ……ごめん」

ぎゅっと私を抱きしめて「ありがとう。夕飯、美味かった」と囁いてくるのがずるい。
「私が作ったんじゃないですもん」
「いいや、おまえが買ってきたから美味かったの」
抱きしめの角度が変わってまた香りが立ち上る。
『大和』のラストノート。私はこの香りに弱い。とても弱い。
「ちょろ、大好きだ」……おまけに耳元でそんなイイ声出されたら。
「……いいです。ハロウィーンだから、からかわれても」
ああ、やっぱり降参してしまった。

「……そういえばハロウィーンだったか」
思いがけない言葉を聞いた、というように壮吾さんが顔を上げる。
「はい。デザートにかぼちゃのプリンを買ってありますよ。かぼちゃ大丈夫ですか」
「甘いの?」
たぶん、でもそんなに甘すぎる感じじゃなさそう、と首をかしげる私のあごを持ち上げる。
「?」
「だったらこっちの方がいいな」

……ひとしきり口内を舌で舐め回された後、熱い吐息と共に唇が離された。
「………甘かった。ご馳走さま。……美味しいお菓子をもらったからもういたずらはやめとくな?」
「……ですか」
「……あと30分待てる?でもおまえ腹減ってるだろ」
「……かぼちゃプリンもらっていいですか」
「いいけど、それでしのげるの?」
「しのげますけど、まさか、あの、ざんぎょうエ」
「ばーか。さっきのは冗談だ!」
先輩、顔が赤いです。
……ハロウィーンのかぼちゃさん、おかげさまで残業後のデートが決まりました。
ハッピーハロウィーン、ありがとう。

(了)


# 【Vol.4心月編発売間近!】KIRA・KIRAシリーズ:ハロウィーン・ショートストーリー第1弾司編

KIRA・KIRAシリーズ第4弾心月編(CV:鷹取玲)が10/30に発売されます。
ティザーサイトはこちらから

発売記念に三夜連続で過去3作のキャラのハロウィーン・ショートストーリーをお披露目します!

司SS用

KIRA・KIRA_Vol.1司編(CV:湯町駆)
「東京上空150メートル」

司がハロウィーンにちなんだデートでもしてみようかと提案してきた。
「予定を立てていい? 明日の晩なんかどう?」
「?明日は平日だけど……仮装行列とかはどこも土日で終わってるんじゃない?」と言うと
「そういうガチのイベントじゃなくてぬるーく乗っかろうっていう話。仕事が終わってからでいいの」とウィンクする。
ハロウィーン仕様に飾り付けた街を歩いたりするのかな。まぁ何でもいいな。司と一緒なら何でも楽しめるはず。

終業時間になり、エレベーターで階下に降りる。迎えに来てくれた司が会社のエントランスで手を振っている。
「俺、今ずっとコスプレしてたよ」
「?」
何だろう。特に変わったところはない。いつものスーツだし、と首をかしげると、
「大好きな彼女が来るのを待ちわびてた男のコスプレ」と笑う。
あは、いわゆる地味ハロウィンだね。
会社を出て、ふたりで地下鉄の駅まで歩いた。

「ところで、俺にどこに行くのか聞かないんだね」
「そうだね。どこに行くの?」
「東京の上空150メートルなんだけど。あなた、ああいうのは大丈夫かなぁ……」
えっ。ハラハラする系なのか。まさかバンジージャンプやスカイダイビングだったり……は無いか。東京上空とは……?
地下鉄の暗い窓ガラスにはハテナマークの浮かんだ私の顔が映っている。
すると、こらえきれなくなったように司が吹き出した。
「ぷはっ、そんなに考え込むとは思わなかった。ほら、ここで降りるよ」
降りたホームには「東京タワーはこちら」の案内板があり「ここに行くってこと」と司がネタをばらす。
「こら、人が悪いぞ」
「だってハロウィーンだもの。いたずらしたいじゃん」
ぎゅっと手をつないで、そのまま唇に引き寄せる司。
「ごめんね?……あんまり無防備に俺を信用するからついからかっちゃった」
そりゃそうだよ。信用しきってるもん。口には出さずに手首を返して彼の指を甘噛みした。
「あひゃひゃ、くすぐってぇ」とふにゃふにゃ笑う。
これで伝わって。

東京タワーには毎年恒例のイベントがある。
それは廃墟に見立てた場所で衣装や小物を使って(無料で貸し出す)写真撮影ができる、というもの。
たまたまこの日はファミリーが多かったのか、次から次へと小さな魔女やちびっこ魔法使いがパパやママの前でポーズを取っている。
「みんな可愛いね」
「うん。あなたも仮装してみれば?」
「え、私だけ?」
「俺はもうさっきやったし。待つ男は渾身のコスプレだったから疲れちゃった」しれっとしているなぁ。じゃあ私もパス。

司が今回見せたかったのはプロジェクションマッピングなのだそうだ。
メインデッキの扉を開くと、目の前に夜景とマッピングが映し出すハロウィーンの映像が広がった。
可愛らしいお化けやコウモリ、かぼちゃたちが、窓や床を動き回っている。その動きがびっくりするほど早い。
「平日の方がじっくり見られると思ったんだよね」
確かに混雑していると夜景も映像も眺めるどころじゃないだろうな。なるほどこれは正解だ。
「夜景も綺麗だね」
「気に入った?」
うん、と肩を寄せる。
司と出逢ってからいつでも何をしても満たされているよ。
「あ、今伝わった」
「ホント?」
うん、めっちゃわかった、と私の肩を抱く司。
「俺も同じ気持ち……あー幸せ」
伝わってた。
ふたりでいれば地上でも東京上空150メートルでもいつも幸せでいられる。
ふいに小さなカボチャがそばにやってきて、それがふふふと笑ったように見えた。


(了)