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Tunaboni Collectionsの制作情報をお知らせいたします

# ツナボニコレクションズ(Tunaboni Collections)公式ブログ

# mariageシリーズ&KIRA・KIRAシリーズ「バレンタイン・スペシャルSS」

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「バレンタインデー前のとある休日のお話」

1.その日、某デパートのバレンタイン特設会場では一軒の店の前に人々が行列を成していた。

宇佐美晃「ああ、全然試食が足りない。奥さーん、ほうじ茶チョコ、刻んでおいてください」
晃の妻「あと二箱しかないですよ、どうします?」
宇佐美晃「うっそー……じゃあ、ほうじ茶は完売の札を出しときましょう」
晃の妻「晃さんよかったですね。新作が大人気ですね!」
宇佐美晃「……うっ……今はそれどころじゃないのでちょっとだけ封印してくださいね」
晃の妻「?何をですか」
宇佐美晃「あなたのそのふにゃら~っとした笑顔です。一瞬盛りそうになったんですよ。心臓に悪い。ささ、お仕事お仕事」
晃の妻「……そっちこそ心臓に悪いですよ!」


2.その会場を歩く諏訪心月と真行寺司。

諏訪心月「へぇ、大盛況だなぁ。司、どこのチョコレートならうちの嫁さんが喜ぶと思う?」
真行寺司「……みーくん相変わらずだね。自分がチョコレートを贈っちゃうんだね」
諏訪心月「もともとバレンタインはそういうものだ。司、男は待ちの姿勢じゃダメなんだ。こっちからガツーンと行かないと」
真行寺司「……あー……。奥さんに同情する。相当ガツンガツンされたんだろうな……」
諏訪心月「なんだと?もうコロッケ買ってやんないよ?……それよりおまえ、彼女とはどうなの」
真行寺司「彼女じゃなくて婚約者ね。おかげ様で順調ですが」
諏訪心月「そうなんだ。一緒に連れてくればよかったのに」
真行寺司「嫌だよ、休日に上司に会わせるの可哀想じゃん。そっちこそ奥さんはどうしたの」
諏訪心月「今、ちびたちを連れて実家に遊びに行ってる。ヒマだから司と遊んでやろうと思って」
真行寺司「えっ、本当は逃げられたんじゃないの?それで寂しくなって俺を呼び出したとか?」
諏訪心月「……おまえ、絶対に許さない」
真行寺司「こんなに大人げのない人がCEOって……ルッチキーオの未来が心配だよ……」


3.その頃の樋口家。

樋口涼「ひよこ。2/14は外に食べに行こう」
涼の妻「別にいいですけど……この日はいつも私の料理を食べてくれてるのにな……」
樋口涼「……ああ。バレンタインのおまえの独創的な料理は楽しみなんだ。でもトキメキすぎて心臓に悪いことがわかってきた」
涼の妻「だったら尚更がんばりますよ。今度は何に入れようかな?チョコレート」
樋口涼「……やっぱりわざとやってたんだな?」
涼の妻「ううん、最初のは大真面目でしたよ? でも今ははっちゃけぶりを期待されている気がするんです。違います?」
樋口涼「……なんてことだ。ひよこが俺に似てきてしまった……」
涼の妻「仲良し夫婦は似てくるらしいですね」
樋口涼「……ぴよぴよぴよぴよ。ホントだ!俺までとうとうひよこに!?」
涼の妻「wwwww」
樋口涼「……おい大丈夫か? ちょっと笑いすぎだぞ?」

※経験値の差で涼の勝ち


4.再びバレンタイン会場。

ティト「ワオ。チョコレート売り場がすごいね、あそこにも待機列ができてる。最後の人は最後尾カードを持たないのかなぁ?」
ティトの妻「……ティトさん、いつの間にオタク文化まで覚えたの?」
ティト「SNSで見たよ。アレは秩序が素晴らしいね」
ティトの妻「検索の方向性がよくわからないよ」
ティト「時代劇はやめて最近はアニメで日本語を学んでるから。でも『無理無理無理無理』……コレはどういう時に使えばいいのかわからない」
ティトの妻「ううん、どこにも使わなくていいと思う」
ティト「ここはアモーレにあふれている場所なんだねぇ……あの女の子、あんなに沢山買ってるよ? 恋人がひとりじゃないのかな?」
ティトの妻「今のバレンタインは友だち同士や自分で楽しむ人が多いのよ。彼氏がいるいないは関係ないの」
ティト「おおう……僕の日本文化の知識はアップデートが足りないようだ。じゃあ、愛しあうカップルはどこにもいないのかな?」
ティトの妻「私たちがそうでしょ?」
ティト「! 確かにそうだよ。僕たちがこの中で一番愛し合ってるよ!この幸せをみんなに分けてあげたいよ」
ティトの妻「……うーん……ティトさんてホントぶれない……」


5.再び宇佐美家の店前。

峯岸達己「あー、やっと順番が来た。すみません、ほうじ茶の生チョコをひとつと、」
宇佐美晃「申し訳ありません。ほうじ茶は完売してしまいまして……」
達己の妻「あらー……たっちゃん、またやっちゃったねぇ」
峯岸達己「本当だな。俺たちいつもこうだな、あはは、困っちゃうねぇ」
宇佐美晃「……本当に申し訳ありません。(この人たちまったりして和むなぁ)」
峯岸達己「じゃあ、この抹茶トリュフの試食、いいですか」
宇佐美晃「勿論どうぞ。お試しください」
峯岸達己「ほら、口開けてみ。あーん……どう?」
達己の妻「!!」
峯岸達己「美味しいんだ。じゃあコレもらおうか?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
峯岸達己「じゃあ、抹茶トリュフを2つ、和紅茶の生チョコを2つ……じゃなくて3つずつがいいんだよね?」
達己の妻「(無言でうなずく)」
宇佐美晃「!? (彼女が言葉を発してないのに、完全に読み取っている!)」
宇佐美晃「(どういうことだ……表情だけでわかるのか……?)」
峯岸達己「ん? 何か?」
宇佐美晃「いえいえ、何でもないです。どうもありがとうございます(熟練の技を見せていただけて)」


6.その頃の佐々木陽と妻。
.
佐々木陽「もしもーし。連絡遅くなってゴメン。やっとホテルに到着したよ。凍えるかと思った」
陽の妻「陽ちゃんお疲れ。アラスカはどう?」
佐々木陽「こっちはものすごく寒い。部屋もまだあったまってないし……アレ、おまえ今どこにいるの?」
陽の妻「デパートでいろいろ見てた。フェア限定のチョコレートアイスが美味しそうだから買っておくね」
佐々木陽「……う……アイスというワードがたまらなく寒い………おまえがいるところはあったかいんだな……」
陽の妻「ありゃっ、ゴメン!」
佐々木陽「別にいいよ。……よし、帰ったらおまえと一緒に風呂でじっくりあったまる。決めたぞ」
陽の妻「うんうん、そうして」
佐々木陽「それで、ぬくぬくしながらベッドの中でチョコレートアイスを食おう」
陽の妻「おー、いいねぇ。アメリカ映画みたいだね」
佐々木陽「……それで、あんなことやこんなことをして、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「……ついでに、指やら舌やらで、」
陽の妻「陽ちゃん?」
佐々木陽「………早くおまえに会いたい……」
陽の妻「……陽ちゃん、がんばって……!」


7.また宇佐美家の店前。

月村海「えーと……抹茶の生チョコ2つ、和紅茶の生チョコを3つ、あと、このお茶の葉タブレットを……んーーー5つ!」
宇佐美晃「はい。こちらはご贈答用ですか?」
海の妻「いえ、この人が全部食べます」
月村海「もーおんちゃん、そんなこと、知らない人にバラさなくていいのにぃ~」
海の妻「ふふ、ごめんごめん」
月村海「俺、すっごい甘党なんです。今日のフェア楽しみにしてたんですよ~、あっちの店でも、○▽■で、」
宇佐美晃「ああ、それはいいですねぇ……(うん、この人たちも和む……)」
海の妻「アレ。……カイ、ほっぺにココアの粉ついちゃってるよ。ちょっとこっち向いて」
宇佐美晃「!?」
月村海「ちょ、おんちゃん、恥ずかしいよ。自分でやるってば」
海の妻「だって自分じゃ見れないでしょ?」
月村海「大丈夫だってば。……あっ、すみません、おいくらですか?」
宇佐美晃「……(うんうん、これもまたひとつの愛の形……)」
月村海「あのぅ??」
宇佐美晃「はっ! すみません、お会計ですよね! 少々お待ちくださいね!」


8.同デパートの別の階にいる高城流星と彼女。
.
流星の彼女「流星、バレンタインの会場に行かない?」
高城流星「いや、さっきCEOを見かけたから、まだ行かない方がいいと思うよ」
流星の彼女「? 別に挨拶くらいしてもいいんじゃない?」
高城流星「ちがうって。捕まったら飲みに連れていかれそうだから避けてんの」
流星の彼女「まさか。いくら何でもこんな昼から飲まないでしょ?」
高城流星「はー……あなたは知らないんだねぇ……プライベートのCEOを……」
流星の彼女「流星、遠い目をしてる……」
高城流星「ってゆーか、俺へのチョコレートを買うつもり?」
流星の彼女「ううん、職場で配る用」
高城流星「俺用は?」
流星の彼女「勿論考えてるよ」
高城流星「ほーお……それはそれは。倍返しを楽しみにしてて」
流星の彼女「……お、お手柔らかにお願いします……!」


9.その頃の大須賀壮吾と壮吾の彼女。

大須賀壮吾「はい、女優さんから貰ったチョコ。ちょろすけにあげるよ」
壮吾の彼女「あらーずいぶん早めにもらったんですね。ズバリ本命じゃないってことですね!」
大須賀壮吾「……あからさまに嬉しそうな顔してるぞ」
壮吾の彼女「私からのは本命ですよ」
大須賀壮吾「おまえからのチョコが義理だったら絶望するわ」
壮吾の彼女「一緒に食べましょうね」
大須賀壮吾「?自分が食べたいチョコを買ったの?」
壮吾の彼女「……ちがいますよ。やはり広告に携わるものとしてはトレンドに乗るべきだと思いまして」
大須賀壮吾「……いやな予感しかしない……」
壮吾の彼女「大丈夫です!私を信じましょう!」
大須賀壮吾「…………」

※彼女がどんなチョコレートを買ったのか壮吾以外知る由もない


(おまけ)
会場で取材をしていた某テレビスタッフ。

インタビュア「……ね、去年インタビューしたあの人たちがいたわ。お客さんにもいたよ? どういうめぐり合わせなんだろうね?」
カメラマン「……やっぱおまえだな」
インタビュア「何?」
カメラマン「……おまえのいちゃいちゃへの欲求があの人らを呼び寄せてんの」
インタビュア「……それって私がいちゃいちゃしたがってるって意味?」
カメラマン「まぁそんなとこだろ」
インタビュア「あんただって去年一緒にいたじゃないよ」
カメラマン「おお、確かにそうだった。俺もいちゃいちゃを欲してるのかな?」
インタビュア「あははは、早く彼女作んなよ」
カメラマン「それ、おまえが言う??……ったく鈍感な女ってタチが悪いよなぁ……」
インタビュア「……ん?なんか言った?」
カメラマン「なんでもなーい。……ほら、帰るぞーー」

(了)

※今年の夏にmariageアソートディスク第3弾「陽夫婦編&ティト夫婦編」をリリース予定です!お楽しみに♪

# 新春お年玉企画「ツナボニ公式特典SSをどーんとプレゼント!(20名様に)」

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
かねてより「音声特典は揃えたのですが公式SSまでは手が出ないです」というお声を幾度となく頂いておりました。
そこで、公式特典SSを新春のお年玉として20名様にプレゼントします!

お年玉企画

◆対象となる作品:SS特典がある作品のすべて(生産終了になったものも含まれます)
※SSがもともと無い作品「こまった彼氏シリーズ」「恋する編集者シリーズ」「ファム・ファタール狂夏」「ファム・ファタール冬の狗」「官能美術館」「あやしの花恋愛譚Ep.1」は対象外になります。

◆応募期間~1/7まで
◆応募方法
1.ツナボニ公式Twitterアカウント(@tunaboni_info)をフォロー
2.お年玉企画のツイート(上の画像付きのツイート) をRT  で完了
◆抽選日~1/12頃
当選者にDMでご連絡します。DMが送信できなかった場合他の方を繰り上げますのでご注意ください。

◆当選者の方にお知らせいただく内容
「好きな作品名」と「形式」を選んでご返信ください。2通りの形式からお選びください。
1.SSペーパーを郵送……ご住所・お名前が必要となります(※公式の仕様のペーパーとは異なります)
2.PDFファイルを添付、またはファイルポストで送信……メールアドレスが必要となります

沢山のご応募お待ちしています!

# KIRA・KIRAシリーズ心月編「クリスマス・ショートストーリー」

KIRA・KIRAシリーズサイト

クリスマス・イヴにちなんでSSをお届けします。
本編からしばらく経った頃のお話です。

0807ツイッター告知CEO

KIRA・KIRA_Vol.4心月編(CV:鷹取玲)

「Bon voyage(ボン・ボヤージュ)」

数週間前、心月さんからクリスマス・イヴの予定を聞かれて、おやと思った。
どうやら彼の方に予定があるらしい。
「社長にやられた……わざとこの日に重役忘年会を入れられたよ。他の連中は今更家族や恋人とイヴを祝うなんて年齢じゃないからね」
さすがにこれ以上の不興は買いたくないということだろう、すまなそうな顔をする。
そうか……恋人と過ごすクリスマス・イヴは無しか。まぁしょうがない。
「いい機会ですよ。社長と和解する方向に持っていってくださいね」
片手を上げて、承知した、と神妙に誓う彼。心月さん頑張って。

「で、その埋め合わせといってはなんだけど。来週の金曜に有休を取ってくれないかな。泊りがけで出かけたい」
「?一泊?」
「そうだね」
「どこに行くんでしょう」
それはナイショ、と片目をつぶる彼。
それまで何故か外泊デートはしたことが無かった(ん?視察旅行はカウントしないよね?)
いたずらっぽい顔で笑う彼を見て何か仕掛けがあるのはわかる。
楽しみなような怖いような……やっぱり楽しみだな。

そして当日。
迎えに来た彼は車のトランクを開けて私の荷物を積み込んだ。中を覗くとやけに彼のスーツケースが大きい。
一泊だと聞いたから私のバッグはコンパクトだ。まさか……海外?いや、パスポートを持ってきてとは言われてないし?
「かさばる服が入ってるからね。じゃあ乗って」
助手席で首をひねる私を見てまた愉快そうに笑う。
かさばる服……あれかな。サンタクロースのコスチューム。時期的にその考えが浮かんだ。

想像してみる。深夜、サンタコスをして私の枕元にプレゼントを置いている心月さん。
ちょっと笑っちゃうな。寝たふりするのは難しそうだし……っていうか普通にキビシイぞ?
「ぷっ(笑)……何考えてるの。笑ったり困ったり忙しいね」
「質問していいですか?」
「どうぞ」
「そのかさばる服って赤い色?」
「?違うよ。赤い方がよかったのかな。黒だよ」
どうやらサンタではないらしい。そうこうするうちに都内を抜けて神奈川に入っていく。

車は山下公園の目の前にあるクラシックホテルのそばの駐車場に停まった。
「すごい……素敵ですねぇ……ここに泊まるんでしょうか?」
「残念だけどちがうな。さてと、荷物を出そう」
ちがうんだ。確かに彼はフロントではなく中のカフェに向かっていく。
「いい時間だからお昼にしよう。このカフェはプリンアラモード発祥の地なんだって」
そうか。ここに泊まるものだと思い込んで図々しいこと言っちゃった。反省。

流石に老舗のホテルだけあってスタッフの接客が素晴らしい。
グラタンもプリンもしっかりした味でとても美味しかった。
「まだ早いからその辺を散策しようか。中華街に行ってもいいし。散策中、荷物はフロントに預かってもらおうかな」
今から車で移動するつもりはないということか。
ますます謎が深まる。じゃあどこに泊まるんだろう。
探偵わたし、詰んだ。もうあとは心月さんとのデートを楽しむだけにしよう。

中華街や山下公園をひとしきりぶらつく。
楽しい反面、ビジュアルが良すぎる彼には周囲の注目が集まるので、そばにいる私はとても面映い。
「……やたらと私たち見られてますね……」
「そう?きみが可愛いからかな」
「ナイ。それはナイ」
「あるよ。他の男に見られないようにしよう」と私を隠すように胸元に抱いた。
恥ずか死ねるとはこのことだ。罪な人だなぁ。
「お。そろそろ大さん橋に行かなきゃ。荷物を受けだしたらタクシーで行くよ」
「大さん橋?遠いんですか?」
「まぁ歩ける距離だけど、荷物が邪魔だとイチャイチャできない。それは避けたいね」
「……タクシーでイチャイチャ、ですか?」
「うん。するかもね」

タクシーは大さん橋に到着した。運転手がげんなりしてるように見えたのは気の所為じゃないと思う。
さん橋の右岸には豪華客船「飛鳥(あすか)Ⅱ」が停泊していた。年に数回しか停泊しないそうで船マニアの人たちが盛んにシャッターを切っている。
「すごい……こんなに大きいんですね。これが豪華客船なんだ……」
「ね、かっこいいね。俺も飛鳥には初めて乗る」
「え?」
「もう乗船の受付が始まってるみたいだから並ぼうか」
え?え?
「あの、ちょっと待って、船に乗るなんて聞いてませんけど!?」
「言ってないもん」
「だって、一泊旅行って……あ!もしかして飛鳥に泊まるんですか!?」
「そうだよ」
「うっそー!」

頭を混乱させたまま船のクルーたちに誘導されて乗船する。
到着デッキには素晴らしいクリスマスツリーが飾られていたし、生のバンド演奏も奏でられていたのだが、それを堪能する気持ちの余裕もなく。

「……気に入らなかった?飛鳥ワンナイトクルーズ、悪くないと思うけど。……見てごらん、さん橋が遠ざかっていくよ」
バルコニーとの間のカーテンを開けてご満悦な彼。
「……気に入らないわけじゃなくて……どうして言ってくれなかったんですか」
「だって、予約が取れるかどうかギリギリまで確定できなかったし」
「取れた時に言ってくれれば……ちゃんとした服を持ってきてないです。ディナーはカジュアルNGなんでしょう?」
「……ああ、きみの服か。フォーマルなドレスを買いに行くつもりだけど?」
「………買う!?」
「豪華客船にはドレスショップがあるものだから。買い物がてらぐるっと探検してみようか」
出会いから彼にはドキドキさせられっぱなしであることを思い出す。
感覚が違いすぎます……神様、平民の私にどうしてこんな彼ができてしまったのでしょうか。

それで探検?をしたのだが、船内の施設はとても充実していて、またも驚かされた。
「カジノがある!」
「あるよ。換金はできないけど」
「シガーバー……」
「喫煙ルームだね。この手の船だとたぶん葉巻を売ってるはずだ。試してみる?」
「……いえ、いいです」

何よりも旅客の服装が気になっていたのだが、今の自分との差異はさほど無いことがわかった。
「そういうものだよ。乗船中ずっとフォーマルじゃ疲れるだろ。長旅だとスポーツウェアで過ごす人も多い。……あ、これなんかどう?」
彼が選んだドレスは私の好みの品だったが、果たして?
恐る恐る値札を見ようとしたが「無粋なことはしないの」と制止されてしまう。
「自分の彼女がキラキラしてる姿が見たいだけなんだよ。……だから付き合ってくれるだけでありがたい」
困ったようなはにかんだような表情で彼の本心を悟った。そうか……そうだった。

私のためとは言わない人。自分のエゴだと言う人。
でも、その純度の高い信念は人を高めて輝かせる物だと思う。ルッチキーオのユーザーも彼の信念で増えていった。
私も彼に出会う前の自分に戻ろうとは思わない。多分、今の私の方が以前よりキラキラしてると思うから。

買い物を終えて船室に戻ると私は言うべきことを告げた。
「ごめんなさい、私、嬉しいんです。クルーズもドレスも」
「うん」
「サプライズをプランしてくれたのに、素直に喜ぶだけでよかったのに、『どうして』とか『嘘』とか驚くばかりで……すごく失礼でした」
「そんなことはない」
心月さんはひそやかに否定する。
「……きみのその感覚がいつも俺の暴走を諌めてくれている。不快になんか思わない。それにこうやって俺に寄り添おうとしてくれる」
「……そう言ってもらえると……」
年が離れているのにこんなにも尊重してくれる。こんな人、他にいるわけがないよ。
「……今、言うべきだな。……ディナーのあとで言おうと思ってたけど今が一番心が近い」
そして、膝を床について私を見上げた。

「……きみは俺にとって唯一無二の人なんだ。だから……結婚してくれないか」
緊張したまなざしだった。今まで見たことがないほどに真剣な。
だから私もきちんと答えようとしたのだけど……なぜか出たのはこんな言葉で。
「……ハイかイエスのニ択で答えますね……どっちにしましょうか?」
「え」
心月さん、私、すっごくあなたに影響を受けてるみたいですよ。

その後、ドレスに着替えた私を見て、ほぅ……と彼がため息をついた。
「よく似合う。最高だ」
そんなことを言う彼こそブラックフォーマルがばっちり決まっていて(どこのハリウッド俳優ですか)と思う。
そして、スーツのポケットからエンゲージリングを取り出して私の左薬指にはめていく。
「これで、婚約者殿はますますキラキラしたね」と頬にキスをする彼。
私を必要として愛してくれる人が、こんなに喜んでくれるのが嬉しい。
そこにディナーの開始時刻を告げる船内アナウンスが流れた。

「時間になったね。婚約者殿、ディナーを堪能しに行こう」
「はい、楽しみです」

腕を組んで歩く廊下の窓越しにライティングされたベイブリッジが映っている。
その下を飛鳥Ⅱは悠然とくぐり沖へと進む。
きっとこの船は幾万人もの人生の折々を見届けてきたんだろうな。
私たちもそのうちの二人なのだと思うと胸が熱くなった。
足を止めた私にやさしいまなざしで心月さんが「ほら、進もう」と促す。
やがて街の夜景は燦然と輝きながらゆっくりと後方に移動していった。

(了)

※SSにしては長かったですね、すみません。楽しんでいただければと思います(かしわ拝)

# 【Vol.4心月編・本日発売!】KIRA・KIRAシリーズ:ハロウィーン・ショートストーリー第3弾流星編

KIRA・KIRAシリーズ第4弾心月編(CV:鷹取玲)が発売となりました。
ティザーサイトはこちらから

三夜連続ハロウィーン・ショートストーリーの最後は、第3弾流星編(CV:テトラポット登)をお届けします。

流星ブログSS

KIRA・KIRA_Vol.3流星編(CV:テトラポット登)
「ハロウィーンの策士」

10月は「自称・私のしもべ」である流星がハロウィーン仕様のお料理を振る舞ってくれている。
以前の言葉、「俺の食事であなたの細胞を作る」の実践がまだ続いているのだ。
そんなに頑張らなくていいよ、と申し出たこともあるが一笑に付された。
しもべが主人のために尽力するのは当たり前でしょ、と。
「イヤだったら我慢して食べる必要はないからね。美味しいと思うものだけ食べて」
そうじゃなくて美味しいから我慢できないのに。白状すると最近体重計に乗るのが怖い。

「太ってきた、と思う……」
「そうかな。どれ」
自然な手付きで私の背中を触る流星。その手がじょじょに下がってお尻にいくので、こらこら、そこでストップ、と制止する。
「ん~~……そうでもなくない?服の上からでも触り心地いいのがわかるし」っ……それはもうアウトなのでは?
と、オーブンから調理終了のチャイムが鳴った。
「お、焼けたみたいだな」
流星は弾む足取りでキッチンに移動していく。

その姿を見送りながら考えた。
どうしたら尽くさせずに済むのかな?
もしかして「アレしてコレして、違う、コレじゃない」って威張っちゃう方が流星的には好み?
仕事中はそれに近い指示も出すけど(一応こちらが先輩なので)プライベートでそれをできるかというと……元々そういう性質というわけでもなく。
……うーん難しいな。
「何を悩んでんの。……あちっ……皿に気をつけて、熱々だから」
「うわっ」

耐熱皿の上では丸々一個のかぼちゃを器にしたグラタンがとろけるチーズで蓋をされてグツグツ音を立てている。
「……すごい……ボリューミィ……」
「器ごと食べられるよ。外側を見てみ。一応、目と口を飾り切りにしてみた。ジャック・オ・ランタンに見える?」
「見える見える。器用だね……流石」
そう言うと満足げに笑った。それがなんとも言えずに良い笑顔なのでつい頭をぐりぐりしたくなる。
(そうか!これだ)
おもむろに流星の頭をぐりぐりする。
「流星って本当に何でも上手だよね。すごいなぁ」
「……相変わらずすげー刺さる……たまんねぇな」とじわじわしている流星。
うん、威張るのは無理だけど褒めるのはできるぞ。褒め上手を目指そう。

なんだかんだ言いつつ、ボリューミィで沢山細胞を増やしてくれそうな夕飯を食べ終わる。
「すごく美味しかった。ごちそうさま」
「残すかもしれないと思ってたけど食えちゃったな。俺はもっとイケたかも」
お料理の好きな人は食いしん坊だと言うが、流星もたくさん食べるタイプだ。これも私の2倍は食べていたのだが。
「流星って太らないよね」
「そういえばそうだな。……なあに?まだ太るかどうか気にしてるの?しなくていいのに」
「……気にするよ。たくさん食べても太らないお料理があればいいのに」
そう言うと、お?という顔になる。
「それって俺へのリクエスト?」
「?できるの?」
ふふん、と不敵に笑って「そりゃできるでしょ」と言ってのける。何だ、そう言えばよかったんだ。
「できるなら次からはそれでお願いしてもいい?」
「もっと取引先に言うみたいに言って」
……それ何かのセリフだった気がする。なんだっけ。
「えーと。……『次回からは太らないお料理の製作を貴殿に依頼したく存じ上げます』……?」
「あ、イメージと違った。やっぱ命令して」
「もー!」

あはは、と笑いながら私を抱きしめる流星。
「この身体を、俺が太らせたり痩せさせたりできるの?最高かよ」
「言ってることが怖いよ」
実のところ流星は策士なのだ。実際、私は主人じゃなくて籠の鳥なんだろうな。
しもべのふりをして私を絡めとってしまった男。
こうと決めたら一直線にその目的に向かって走れる男。
「だって、あなた、俺に愛されちゃってるんだもの。しょうがなくない?」
ん?といたずらっぽい目で私の顔を覗き込む。
「しもべを退任して『あなたの管理責任者』になろうかな」
「もうなってる」
「ちょっと違うな。大事にするのは一緒だけど、あなたの意志が反映されなくなるよ?」
「……ますます怖い」
「怖くないよ」
そう言って私の頬にやさしく口づける。

私の髪を撫でる手付きも耳に落とすキスもやさしいのに少し不安だ。
崇拝される器とも思えないのにそういう目で見られたこと。
そして「あなたはそのままでいいの」と言い切られたこと。そんなにいい女扱いされていいの?と思ってしまうのだ。
「私、ホントにこのままでいいのかな」
うん、と首筋にもキスをされる。
「どんなあなたでもいい。このままでもいいし、変わってもいいし」
「……うーん……」
「……なぁ、考え事やめない?いちゃつく時間が無くなるよ」
「流星のこと考えてるのに」
「何それ。殺し文句か」
「……振られたくないんだよね……」
「……ダブルで殺しに来た。コレが計算ならすごい策士……」
計算じゃな、と言いかけた言葉は彼の口の中に吸い込まれる。
そして、それは深い深いキスに変わっていった。

流星と初めて迎えたハロウィーンがもうすぐ終わる。
次もまたその次のハロウィーンも、ずっと流星と一緒に迎えられますように。ハッピーハロウィーン。


(了)

※全作かぼちゃをキーアイテムにしてみました。お楽しみいただけましたら幸いです(かしわ拝)

# 【Vol.4心月編明日発売!】KIRA・KIRAシリーズ:ハロウィーン・ショートストーリー第2弾壮吾編

明日10/30はKIRA・KIRAシリーズ第4弾心月編(CV:鷹取玲)の発売です。
ティザーサイトはこちらから

三夜連続のハロウィーン・ショートストーリー2つ目は、第2弾壮吾編(CV:久喜大)のお話です。

壮吾SS

KIRA・KIRA_Vol.2壮吾編(CV:久喜大)
「残業ハロウィーン」

今、壮吾先輩は絶賛残業中だ。
F3層(50代以上のユーザー)向けのラインのCMにずっと起用していた女優さんから、契約の休止を求められてしまった。健康上の理由とのことで仕方ないとはいえ、おおよそ組んでいた来期のCMスケジュールが白紙になった。
それで一からプランの組み直しをしているというわけ。

何か手伝えることはないかとうろうろしているのを見咎められる。
「ちょろすけ、俺を待たずに帰っていいよ」
「いえ、私もいつかピンチが来るかもしれないので後学のために」と言うと
「全然ピンチじゃないし。……まぁたまにはこんなこともあるよ」とにやりと笑う。
「ありますか」
「あるね。でもタレントを差し換える場合、イメージに合う人を選抜するのに時間がかかるしコンセプトも変えることがある。CMプランナーに丸投げもできるけど、それだと俺の流儀に反するな」
かっこいい。尊敬する。自分の仕事にプライドがある人の言葉だと思う。

「なぁ、俺、今尊敬された?」
うなずくと、またまたニカッと笑い「よし、褒めてくれたお返しに撫でてやろう」とクシャクシャ頭をかき混ぜられた。
「ていうか、これサビ残になるぞ。……俺のそばにいたいならそう言えばいいだろ」
上目遣いに見つめてくるのがずるい。
現在職場には私たち以外の誰もおりませんが、先輩?残業トークに甘さを混ぜてくるのはいかがなものでしょう。
まだ見つめ合っていたかったけど、どっぷり浸るわけにはいかないのであえて身体を離した。
「……えーと、夕飯買ってきますよ。何がいいですか?」
「おお助かる。何でもいいや。任せる」
ラジャ―! 美味しそうな夕飯を見繕ってまいります。

買い物かごを持ってコンビニ店内をうろつく。
お母さん食堂、美味しいよね……これに白いご飯とサラダは悪くないと思う。
何がいいかな。何でも食べる人だけど、と最後のひとつだったハンバーグに手が伸びた。
人気があるみたいだね、これにしよう。
ふとレジ横を見ると、ハロウィーンパッケージのスナック菓子が山積みされていて、すべて半額の値札が貼られている。
そうか。ハロウィーンももう終わるんだ。
せめて雰囲気だけでも味わってもらおう、と言うことでかぼちゃのプリンを買ってみた。

休憩室に立ち寄って、ご飯とおかずをレンチンする。デミグラのいい匂い。うん、間違いがない。
このドアの向こうに腹ペコの先輩がご飯を待っていると思うと何故か「お母さん的な気分」になってきた。
「おお、ありがとう。美味そう」
破顔する壮吾さんがやけに可愛い。
箸を使ってご飯をかきこんでいる横顔を見ながら(壮吾、美味しいかい?)と心の中で呼びかけてみる。
「……?おまえの分は?」
「いえ、私は帰ってから食べます」
「アレ、帰してもらえると思ってたの?」
「!」
「なぁ、ちょろ知ってるか?残業エッチって会社員の6割が体験してるらしいぞ」
「!?」

驚き固まる私の頬に大きな手が伸びる。ああ、胸元から『大和』の香りがする。私たちの。
(駄目です、駄目、そんなこと、しちゃ駄目、絶対に……………)(……?)
薄く目を開けると身体を折り曲げて笑う壮吾さんの姿があった。
「あっはっはっはっ、おまえ、ホントにちょろいな。まさか目を閉じるとは思わなかった」
「~~~~!」
………ひどい。からかわれた。
「……帰ろうかな」
「怒った?」
「怒ってないです。休憩室の冷蔵庫にデザートがあるので食べてください」
「悪かったよ……ごめん」

ぎゅっと私を抱きしめて「ありがとう。夕飯、美味かった」と囁いてくるのがずるい。
「私が作ったんじゃないですもん」
「いいや、おまえが買ってきたから美味かったの」
抱きしめの角度が変わってまた香りが立ち上る。
『大和』のラストノート。私はこの香りに弱い。とても弱い。
「ちょろ、大好きだ」……おまけに耳元でそんなイイ声出されたら。
「……いいです。ハロウィーンだから、からかわれても」
ああ、やっぱり降参してしまった。

「……そういえばハロウィーンだったか」
思いがけない言葉を聞いた、というように壮吾さんが顔を上げる。
「はい。デザートにかぼちゃのプリンを買ってありますよ。かぼちゃ大丈夫ですか」
「甘いの?」
たぶん、でもそんなに甘すぎる感じじゃなさそう、と首をかしげる私のあごを持ち上げる。
「?」
「だったらこっちの方がいいな」

……ひとしきり口内を舌で舐め回された後、熱い吐息と共に唇が離された。
「………甘かった。ご馳走さま。……美味しいお菓子をもらったからもういたずらはやめとくな?」
「……ですか」
「……あと30分待てる?でもおまえ腹減ってるだろ」
「……かぼちゃプリンもらっていいですか」
「いいけど、それでしのげるの?」
「しのげますけど、まさか、あの、ざんぎょうエ」
「ばーか。さっきのは冗談だ!」
先輩、顔が赤いです。
……ハロウィーンのかぼちゃさん、おかげさまで残業後のデートが決まりました。
ハッピーハロウィーン、ありがとう。

(了)